当事務所の実務でも、日韓夫婦が離婚を決意した際に「子どもの親権はどうなるのか」「日本と韓国で制度が違うのか」という相談が増えています。日本でも2026年4月1日から選択的共同親権制度が施行されましたが、韓国の親権者・養育者指定とは用語も実務も一致しません。特に日本の改正法をそのまま韓国法に当てはめて手続きを進めてしまうケースが実務上見受けられます。このページでは、韓国 養育権 親権の制度と日本の共同親権制度の違い、そして韓国での判断基準を弁護士が解説します。
韓国 養育権 親権 — 日本の共同親権制度との比較
日本でも2026年4月1日から選択的共同親権制度が施行されました(改正民法第819条)。ただし、韓国では離婚後の親権者・養育者の指定という二層構造が以前から制度化されており、「親権者は誰か」と「日常的に養育する者は誰か」を別々に定めることが可能です。この設計は日本の改正法とも異なるため、用語をそのまま置き換えると誤解が生じます。
| 項目 | 日本(2026年4月1日改正後) | 韓国 |
|---|---|---|
| 離婚後の親権形態 | 父母双方又は一方を親権者に指定可能(改正民法第819条) | 制度上は単独・共同どちらも選択可能だが、実務上は単独親権に定めるケースが大半。親権者と養育者を分けて指定することも可能。 |
| 親権と養育権の区別 | 親権・監護・親子交流は改正法下で個別判断 | 親権(법률상 의사결정권)と養育権(일상 양육권)を手続上分けて設計 |
| 面接交渉 | 親子交流は親権の有無だけでなく子の利益を基準に調整 | 養育者でない親に認められる(裁判所が方法を定める) |
| 判断基準 | 子の利益(子の監護に関する事項) | 子の福祉を最優先 |
| 国際離婚での準拠法 | 離婚一般:通則法27条・25条 / 親子間の法律関係:同32条(子の本国法が父又は母の本国法と同一なら子の本国法、それ以外は子の常居所地法) | 離婚一般:韓国国際私法第66条 / 親子間の法律関係:同第72条(父母と子の本国法が同一ならその法、それ以外は子の常居所地法) |
「親権者」と「養育者」— 韓国独自の二層構造
韓国法の特徴として、親権者と養育者を切り離して定めることができます。例えば、「親権者は父母の共同」としながら「日常的な養育は母が担う」という形も法的に可能です。日本の改正法にも共同親権の選択肢は導入されましたが、韓国のように「親権者」と「養育者」を手続上分けて設計する実務とは異なるため、用語をそのまま置き換えると誤解が生じます。どちらの権限をどのように定めるかは、子どもの日常生活や学校・医療に関する決定権にも直結します。
韓国裁判所が養育権・親権者を指定するときの判断基準
韓国大法院 2018므15534(2020年5月14日)は、「未成年の子の養育者を定める際には、子の性別・年齢、父母の愛情と養育意思、経済的能力、養育方式の合理性・適合性、相互の調和可能性、親子の親密度、子自身の意思など、すべての要素を総合的に考慮し、子の成長と福祉に最も資する方向で判断しなければならない」と判示しました。同判決はさらに、共同養育者指定は「父母間の協力可能性、子の生活安定性、住居移動による経済的・時間的負担、紛争の状況などを総合して慎重に判断される」ものであり、自動的に認められるものではないことを明確にしています。
韓国の家庭裁判所は、子の年齢や生活環境、父母それぞれの養育に関する事情、子自身の意向など、子の福祉に関わるさまざまな事情を総合的に考慮して判断します。どのような事情がどの程度重視されるかは個別の事案によって大きく異なるため、具体的な見通しについては個別相談の形でご確認ください。
日本人の親が直面しやすい三つの壁
日本人の方が韓国での親権・養育権争いに臨む場合、一般的な韓国人同士の離婚とは異なる困難が生じやすいです。
言語と書類の壁:韓国の家庭裁判所への申立書類はすべて韓国語です。準拠法の選択、養育計画書の内容、財産目録の記載など、不利な内容を気づかないまま署名してしまうケースや、期限を過ぎてから問題に気づくケースが実務上あります。
日韓双方の戸籍手続き:韓国で親権者・養育者が決定された場合でも、日本の戸籍(または在外公館への届出)との整合を取る手続きが別途必要です。どちらの国にどのタイミングで届出を行うかを誤ると、日本側の戸籍と韓国側の家族関係証明書が食い違う状態が生じることがあります。
ビザ・在留資格への影響:子どもが韓国の在留資格を持っている場合、親権・養育者の変更は子の在留資格の管理者にも関わります。また、日本に帰国する親が子を連れて日本に移動する場合、相手方の同意なしに行うとハーグ条約(韓国は2013年加入)上の「子の連れ去り」と判断されるリスクがあります。
どちらの国の法律が適用されるか
日韓夫婦の離婚で親権を争う場合、韓国の裁判所に申し立てたとしても、準拠法は必ずしも韓国法になるとは限りません。離婚一般については韓国国際私法第66条、親子間の法律関係については同第72条が問題となります。第72条は、父母と子の本国法がすべて同一であればその法により、それ以外の場合には子の常居所地法によると定めています。日韓夫婦の場合、子の生活拠点がどこにあるかが重要な判断要素になります。
この判断は、子の年齢・居住地・双方の国籍・婚姻の準拠法など複数の要素が絡み合い、一律に答えが出るものではありません。当事務所の実務では、日韓両国の法制度を踏まえた上で、どの管轄で申し立てるかを最初に検討することが、その後の手続きを大きく左右すると感じています。詳しくは韓国での親権・養育権に関するページもご参照ください。
よくあるご質問
Q. 韓国で離婚した場合、日本人の親は親権を取れますか?
韓国の裁判所は国籍ではなく「子の福祉」を最優先に判断します。日本人の親であっても、主たる養育実績や経済的安定性、子との親密度などが評価されます。ただし韓国語での手続き対応や戸籍手続きの複雑さから、早期に専門家に相談することが重要です。
Q. 韓国では共同親権は認められますか?
韓国では共同親権者の指定は可能です。ただし、共同親権と共同養育者指定は同じではありません。日常的な養育を父母双方に分担させる共同養育者指定については、大法院(2018므15534, 2020年5月14日)が父母間の協力可能性・子の生活安定性・住居移動による負担・紛争状況などを総合して慎重に判断すべきとしています。
Q. 韓国での親権決定は日本でも有効ですか?
韓国の確定判決を日本で扱う場合には、日本民事訴訟法第118条の外国裁判承認要件、戸籍実務、必要に応じた家庭裁判所での手続を個別に確認する必要があります。
Q. 子どもを日本に連れて帰ることはできますか?
韓国はハーグ条約に2013年から加入しています。相手方の同意なく子を日本に移動させると、ハーグ条約上の「不法な連れ去り」と認定され、子の返還が命じられるリスクがあります。移動前に必ず法的確認が必要です。
Q. 韓国での離婚で親権者と養育者を分けることはできますか?
韓国法では親権者と養育者を分離して定めることが可能です。例えば、医療・教育に関する重要事項の決定は共同で行いながら、日常的な養育は一方の親が担うという取り決めが法的に有効です。日本の改正法とは手続上の設計が異なります。
管轄の選択、準拠法の判断、韓国の養育権・親権の基準 — これらの要素は個別の事情によって組み合わせが異なります。どこから手をつければよいかお悩みであれば、まずLINEで現在の状況をお知らせください。
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Pyoung-ho Kim 弁護士 (キム・ピョンホ)
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。
韓国弁護士協会 家族法専門弁護士登録。2021年 優秀弁護士賞受賞。
2015年以来、500件以上の事件を担当。