当事務所の実務でも、「韓国のルールが日本と違うと知らなかった」「軽い気持ちで運転したら逮捕された」という在韓日本人からの相談が増えています。韓国の飲酒運転(음주운전)罰則は2019年に大幅に厳格化され、日本と同じ0.03%という基準値でも、その後の処罰体系や手続きは大きく異なります。初犯でも懲役刑が科される可能性があり、長期就労ビザ保有者にとっては生活基盤を一度に失うリスクも伴います。

この記事では、韓国 飲酒運転 罰則の詳細・日韓の違い・外国人特有のビザリスク・逮捕後の手続きを弁護士が解説します。

2019年の法改正 — なぜ韓国の飲酒運転は厳しくなったか

2019年以前、韓国の飲酒運転基準は血中アルコール濃度(BAC)0.05%でした。しかし2019年、飲酒運転による死亡事故が社会問題となり、基準が0.03%へ引き下げられ、同時に罰則も大幅に加重されました(도로교통법 제148조의2 개정)。

日本と数値は同じでも、韓国ではBAC水準に応じた3段階の処罰体系が設けられており、上位段階では初犯から実刑が科される設計になっています。グラス1杯のビールや日本酒でも、体格・代謝によっては0.03%を超えることがあります。

韓国 飲酒運転 罰則 — BAC別処罰基準表

血中アルコール濃度 刑事罰(初犯) 免許
0.03% 〜 0.08%未満 1年以下の懲役 または 500万ウォン以下の罰金 100日間停止
0.08% 〜 0.2%未満 1年以上2年以下の懲役 または 500〜1,000万ウォンの罰金 取消
0.2%以上 2年以上5年以下の懲役 または 1,000〜2,000万ウォンの罰金 取消
測定拒否 1年以上5年以下の懲役 または 500〜2,000万ウォンの罰金 取消
10年以内の再犯 0.2%未満:1〜5年 / 500〜2,000万ウォン
0.2%以上:2〜6年 / 1,000〜3,000万ウォン
拒否・妨害再犯:1〜6年 / 500〜3,000万ウォン
取消

日本の酒気帯び運転・酒酔い運転の区分は、韓国のBAC別処罰区分とそのまま対応するものではありません。韓国では0.08%以上から「懲役の下限が1年」に設定されており、BAC、事故の有無、再犯の有無、測定拒否の有無などにより、初犯でも重い処分が問題となることがあります。人身事故がある場合は通常の飲酒運転より重く評価され、特に酒に酔って正常な運転が困難な状態だったと判断されると、特定犯罪加重処罰法上の危険運転致死傷罪が問題となることがあります。

韓国大法院の最新判例 — 2件確認済み

① 飲食店内での飲酒測定の適法性 — 韓国大法院 2025도6752(2025年12月11日宣告)

「泥酔した人物が車を駐車して飲食店に入った」との通報を受けた警察官が、不特定多数が出入り可能な飲食店に通常の方法で立ち入り、物理的強制力を用いずに飲酒測定を行った事案で、大法院はこの測定は任意捜査として許容される適法な手続きと判断しました(韓国大法院 2025도6752、2025年12月11日宣告)。「飲食店内だから令状が必要」という主張は通らないことが明確にされた判例です。日本の刑事訴訟法とは捜査許容範囲の考え方が異なる点に注意が必要です。

② 測定タイミングと証明基準 — 韓国大法院 2025도8137(2025年12月11日宣告)

運転時点と測定時点の間に時間があり、アルコール上昇期だった可能性があるとしても、その事情だけで処罰基準値超過の証明が不可能とは言えないと判示されました。測定値と基準値の差異、飲酒時間・量、摘発時の行動などを総合的に考慮して判断するとされており(韓国大法院 2025도8137、2025年12月11日宣告)、「測定が遅れたから基準以下だったはず」という主張だけでは無罪になりません。

外国人特有のリスク — ビザへの影響

在韓日本人にとって飲酒運転が特に深刻なのは、刑事処罰だけでなく在留資格(ビザ)に直結するリスクがあるためです。罰金刑だけで直ちに強制退去となるとは限りません。ただし、犯罪記録は在留資格の更新・変更審査で不利益要素となり得ます。懲役刑、交通事故、人身被害、再犯の場合は強制退去・出国命令リスクを別途検討する必要があります。また捜査機関の要請により法務部で出国制限措置が取られると、一定期間韓国から出国できないことがあります。

ビザ種別 飲酒運転摘発時の主なリスク
E-2(語学教師)/ E-7(特定活動) 雇用先・教育機関との契約や更新・変更審査で不利に考慮される可能性。通知・確認の範囲は事案ごとに異なる
F-2(거주)/ F-5(永住) 重大犯罪・実刑・再犯では在留上の不利益が問題となり得る。F-5は一般ビザのような単純更新拒否とは区別して検討
D-10(求職) 在留期間更新不許可リスク
短期滞在(観光・商用) 出国後の再入国拒否・K-ETA不許可

出入国当局はイミグレーション上の判断を、刑事裁判所とは独立して行います。刑事事件が比較的軽い結論で終わった場合でも、犯罪記録や捜査・処分履歴が在留資格の更新・変更審査で不利に考慮されることがあります。特に就労系ビザでは、雇用先や管轄機関の確認範囲も含めて事案別に検討する必要があります。

「罰金を払えば終わり」ではない — 약식명령の落とし穴

初犯で下位BAC(0.03〜0.08%)の多くは、약식명령(簡易命令手続き)で処理されます。検察が罰金を請求し、裁判官が書面だけで判断する手続きです。決定通知は韓国語で郵送されます。

この通知への異議申立期間は受領から7日間のみ。韓国語の書類と認識できず期限を逃すと、有罪判決が確定し、ビザ更新時にその記録が影響します。弁護士に依頼すれば、この7日間に正式裁判を請求して、減刑につながる事情を主張することができます。

逮捕後の初動 — 最初の48時間前後の対応が重要

逮捕後は原則として48時間以内に釈放するか、検察を通じて勾留令状を請求するかが判断されます。外国人事件では、この初期48時間が防御方針、身柄解放資料、通訳・住居・職場・出入国リスクに関する資料を準備する重要な時間帯です。逮捕直後に弁護士に連絡し、勾留令状請求の可能性に備えた意見書・資料を準備することが重要です。

測定を拒否してはいけません。拒否は飲酒運転本体より重い処罰を受ける独立した犯罪です。結果に異議があれば、検査後に血液検査を申請することが正しい対応です。刑事手続きとビザ手続きの両方を並行して管理するためには、外国人の韓国での交通事故・飲酒運転事件に精通した弁護士への早期相談が不可欠です。

なぜ弁護士への相談が必要か、一言で言えば:逮捕後の初動対応次第で、刑事処分の見通しやその後の在留審査への影響が大きく変わるからです。日本語でのご相談は、LINEからいつでも受け付けています。


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よくある質問(FAQ)

Q1. 韓国で飲酒運転で捕まったら、日本のパスポートは没収されますか?
逮捕・勾留されてもパスポートは通常没収されません。ただし捜査機関の要請により法務部で出国制限措置が取られると、一定期間韓国から出国できないことがあります。解除申請の可否は事件の性質と捜査段階により異なります。

Q2. 韓国で飲酒運転の罰金を払えば、ビザには影響しませんか?
罰金刑であってもビザ更新審査の際に犯罪歴として記録されます。罰金刑は強制退去事由に直接は該当しませんが、ビザ更新の不許可要素となり得るため注意が必要です。

Q3. 韓国でのアルコール検査を拒否することはできますか?
初回の測定拒否でも、懲役1年以上5年以下または罰金500万〜2,000万ウォンの対象になり、再犯・測定妨害がある場合はさらに重く評価されます。拒否は得策ではなく、測定後に血液検査を申請するのが正しい対応です。

Q4. 在韓日本大使館はどこまで助けてくれますか?
大使館は領事業務として面会・通訳紹介などの支援はしますが、法的な弁護はできません。刑事弁護と出入国対応の両方を扱える韓国の弁護士への委任が不可欠です。

Q5. 軽い飲酒運転(0.03〜0.08%)でも懲役になりますか?
初犯かつ人身事故がない場合、多くは약식명령(簡易命令)による罰金で処理されます。ただし、この罰金判決も犯罪記録として残り、ビザ更新に影響します。7日以内に異議を申立てることで正式裁判を請求することができます。


金平浩(キム・ピョンホ)弁護士 — 執筆者紹介

韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。韓国弁護士協会 家族法専門弁護士登録。2021年 優秀弁護士賞受賞。2015年以来、500件以上の事件を担当。