当事務所の実務でも、日本人配偶者が韓国で離婚後、財産分与の交渉に際して「日本と全く違う」と戸惑われるケースが増えています。韓国法における財産分与は、日本民法の制度とは考え方・基準・手続きの面で大きく異なります。本記事では、韓国 離婚 財産分与の仕組みと日本法との主要な違いを、最新の大法院判例を交えて解説します。
韓国の財産分与制度とは
韓国民法第839条の2(協議離婚の場合)および第843条(裁判離婚の場合)は、「財産分割」(재산분할)を規定しています。分割の基本原則は、「財産の名義にかかわらず、その形成・維持への実質的な貢献度に応じて各自の取り分を定める」という点です。
専業主婦(夫)の家事・育児も重要な間接貢献として考慮されます。ただし分与割合は婚姻期間、財産形成の経緯、各当事者の貢献、特有財産・債務の有無などを総合して個別に判断され、一定の割合が自動的に適用されるわけではありません。
韓国法と日本法の主要な違い — 比較表
日本の財産分与制度(民法第768条)と韓国法の違いを整理すると、下記のとおりです。
| 比較項目 | 韓国法 | 日本法 |
|---|---|---|
| 分与対象財産 | 婚姻中に共同形成した積極財産(消極財産も考慮) | 婚姻中に形成した共有財産(清算的分与) |
| 専業主婦の貢献度 | 家事労働・育児を間接貢献として明確に算入。分与割合は婚姻期間・財産形成経緯・貢献度等を総合して個別に判断 | 2分の1ルールが実務上の出発点となるが、個別事情により異なる |
| 退職金・年金 | 婚姻期間相当分を分割対象と認める(판례 確立) | 財産分与の対象と認められるが額の算定は個別判断 |
| 特有財産(相続・贈与) | 原則除外。ただし配偶者の貢献で価値増加があれば按分考慮 | 原則除外(清算的分与の対象外) |
| 財産評価基準時点 | 原則として事実審の弁論終結日。ただし破綻後の無関係な財産変動は除外・調整され得る | 基準時点に関する明文規定なし(実務上は口頭弁論終結時) |
| 慰謝料との関係 | 財産分与と慰謝料は独立して別途請求可能 | 財産分与と慰謝料は区別して検討されますが、具体的な請求・和解の組み立てでは清算的要素、扶養的要素、慰謝料的要素が問題となることがあります |
大法院判例から見る財産分与の実務
2025年10月、大法院は財産分与の実務に重要な判断を示しました。
大法院 2025年10月16日宣告 2024므13669, 13676 判決は、財産分与における財産評価の基準時点について「婚姻関係が破綻した後の口頭弁論終結日までの財産変動が、婚姻中に共同形成した財産関係と無関係であるなど特別な事情がある場合、変動後の財産は分割対象から除外しなければならない」と判示しました。また同判決は、親族など第三者の支援が夫婦財産の形成・維持に実質的に寄与した場合には一方配偶者の貢献として考慮し得るとしつつ、その支援の内容が著しく反社会的・反倫理的である場合には財産分与に参酌できないという限界も示しています。日本民法には同等の明文基準がなく、韓国法固有のルールとして注意が必要です。
日本人配偶者が韓国で財産分与を求めるときの壁
当事務所に相談される日本人のご依頼者が共通して直面する困難をご紹介します。
①準拠法の問題:日韓夫婦の離婚には、まず「どの国の法律が適用されるか」(準拠法)を決定する必要があります。韓国の裁判所で手続を行う場合でも、まず韓国の国際私法に基づいて離婚・財産関係に適用される準拠法を検討します。事案によって韓国法が適用されることもありますが、国籍、常居所、財産所在地、婚姻生活の中心地などにより判断が分かれます。詳しくは国際離婚と準拠法の選び方(弁護士解説)をご参照ください。
②不動産登記と名義の問題:韓国の不動産は夫名義で登記されていることが多く、貢献度の立証が必要です。日本語での証拠提出には翻訳・認証手続きが加わり、費用と時間がかかります。
③戸籍・家族関係証明書の取得:韓国の財産分与手続きでは、韓国の家族関係証明書や婚姻関係証明書(혼인관계증명서)が必要です。日本に帰国済みの場合、在外公館や国際配送を通じた取得が必要になります。
④在留資格への影響:F-6(結婚移民)ビザで在韓中の場合、離婚後のビザ維持には在留資格の切り替えなど別途手続が必要となる場合があります。なお、訴訟継続中はビザ延長申請ができる場合があるため、在留状況については入国管理当局への確認や弁護士へのご相談をお勧めします。
⑤言語と手続きの壁:韓国家庭裁判所への申立書・答弁書はすべて韓国語での作成が必要です。通訳を介した手続きでは、微妙なニュアンスや法律用語の齟齬が不利な結果につながることがあります。
財産分与手続きの流れ(韓国)
| 段階 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 当事者間協議(任意) | 当事者が直接協議し合意を目指す。合意成立時は公正証書等で確定 | 合意できない場合は裁判所手続へ |
| 審判申立 | 家庭裁判所に財産分割審判を申し立てる。直接申立も可能。裁判所の判断で調停に付されることもある | 調停は必須ではない |
| 審判・証拠調べ | 証拠提出・財産照会・鑑定等を経て裁判所が分割割合・額を決定 | 6か月〜1年以上 |
| 確定・執行 | 審判確定後の不動産移転・金銭支払い等の執行 | 1〜3か月 |
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 日本で離婚が成立した後に、韓国の財産について別途手続きはできますか?
日本で離婚が成立した後でも、韓国所在財産について韓国で別途手続を検討できる場合があります。ただし、既存の日本側判決・調停・合意の内容、準拠法、韓国法上の期間制限、重複請求の可否によって結論が変わるため、個別確認が必要です。まずは弁護士にご相談ください。
Q2. 韓国の財産分与で「2分の1ルール」は適用されますか?
韓国では、分与割合は婚姻期間・財産形成の経緯・各当事者の貢献・特有財産や債務の有無などを総合的に判断して個別に決定します。一定の割合が自動的に適用されるわけではなく、事案の具体的な事情が結果を左右します。
Q3. 配偶者が財産を隠している疑いがあります。どのように調査できますか?
韓国の家庭裁判所では、事案に応じて財産目録の提出、金融取引情報の提出命令、登記・登録資料の照会、文書提出命令などを組み合わせて財産関係を確認します。ただし、利用できる手段や範囲は申立内容・証拠状況・裁判所の判断によって異なります。
Q4. 韓国の判決で確定した財産分与は日本でも執行できますか?
韓国の確定判決は、日本の民事訴訟法第118条の承認要件を満たすかを確認したうえで、強制執行には民事執行法第24条に基づく執行判決手続が必要となります。両国の手続きを並行して進める必要があり、専門家のサポートが不可欠です。
Q5. 相談はオンラインでも可能ですか?
はい、日本国内からのビデオ相談・LINE相談に対応しています。ご都合の良い時間帯にお気軽にお問い合わせください。
韓国の財産分与は、日本法とは異なるルールと複雑な手続きが絡み合います。特に国際的な事案では、準拠法の選択・証拠の収集・両国間の手続き調整を一人で行うことが難しい場面がほとんどです。
なぜ弁護士への相談が必要か。それは、財産分与の結果が「実態をどれだけ正確に立証できるか」で大きく変わるからです。
まずは、LINEでのご相談(@243hjkda)から、韓国法に精通した弁護士へお気軽にご連絡ください。
Pyoung-ho Kim 弁護士 (キム・ピョンホ)
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。
韓国弁護士協会 家族法専門弁護士登録。2021年 優秀弁護士賞受賞。
2015年以来、500件以上の事件を担当。