深夜、韓国の警察署から「ご家族を逮捕しました」という電話が入る。あるいはソウル出張中の同僚が、そのまま帰ってこないという連絡が回ってくる——(以下の状況は制度の理解を助けるための一般的な例であり、特定の依頼者の事件ではありません)。韓国で逮捕された場合、身柄の帰すうは日本の感覚よりも速く決まります。逮捕から48時間以内に拘束令状(日本の勾留請求に相当)が請求され、原則としてその翌日までには、判事の面前での審査が行われるからです。
この記事では、韓国の逮捕の類型、逮捕から拘束までの流れと期間、日本の勾留との違い、そして日本にいる家族に何ができるかを整理します。ただし、逮捕が適法だったのか、拘束が認められるのかは、事案ごとの具体的な事実関係によって大きく変わります。この記事は現行の制度についての一般的な説明であり、個別事案の判断に代わるものではありません。
韓国の逮捕には3つの類型がある
韓国の刑事訴訟法上、逮捕には大きく3つの類型があります。第一に、判事が発付した逮捕状による逮捕です。罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、正当な理由なく出席要求に応じない、または応じないおそれがあるときに認められます(刑事訴訟法第200条の2)。第二に、緊急逮捕です。長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪について、証拠隠滅や逃亡のおそれがあり、令状を得る時間的余裕がない緊急の場合に、令状なしで行われます(同法第200条の3)。第三に、現行犯逮捕です(同法第212条)。
どの類型で逮捕されたかによって、その後の手続きと争い方の出発点が変わります。特に緊急逮捕と現行犯逮捕は、要件を満たしていたかどうかが逮捕当時の状況を基礎に事後的に争われ得る領域であり、その評価は記録と事実関係を精査して初めて可能になる専門的な判断です。
逮捕から48時間 — 拘束令状の請求と実質審査
韓国で逮捕された被疑者の身柄拘束を続けるには、捜査機関は逮捕した時から48時間以内に拘束令状を請求しなければなりません。この期間内に請求がなければ、被疑者は直ちに釈放されます(刑事訴訟法第200条の2第5項・第200条の4)。緊急逮捕後に釈放された者は、令状なしに同一の犯罪事実で再び逮捕されません(同法第200条の4第3項)。
拘束令状が請求されると、判事は遅滞なく、特別な事情がない限り請求日の翌日までに被疑者を直接審問します。これが「拘束前被疑者審問」、いわゆる拘束令状実質審査です(同法第201条の2)。判事は、一定の住居がないか、証拠を隠滅するおそれがあるか、逃亡し、または逃亡するおそれがあるかという拘束事由に加え、犯罪の重大性、再犯の危険性、被害者や重要参考人らへの危害のおそれなどを考慮して判断します(同法第70条参照)。
大法院も、拘束令状を発付するかどうかの決定は最大限迅速になされなければならず、そのための審問は拘束の判断に必要な事項に限って迅速かつ簡潔に行われるべきであり、正当な理由なく審問手続きが遅延して令状が発付されないまま身柄の自由が長期間制限されることがあってはならない、という枠組みを明確にしています(大法院2025年3月13日宣告2022도9819判決)。速さは、韓国の身柄手続きに制度として組み込まれているのです。裏を返せば、逮捕から実質審査までに使える準備の時間は極めて限られています。この短い期間にどの事実をどう整理して臨むかは事案ごとに全く異なり、初期の対応がその後の選択肢の幅を大きく左右します。
拘束はいつまで続くのか — 日本の勾留との違い
実質審査の結果、拘束令状が発付されると、捜査段階の身柄拘束が始まります。韓国の「拘束」は日本の「勾留」に相当しますが、期間の構造が異なります。
| 段階 | 韓国 | 日本(参考) |
|---|---|---|
| 逮捕後の身柄判断 | 逮捕から48時間以内に拘束令状を請求。原則、請求日の翌日までに判事が直接審問(実質審査) | 逮捕から最大72時間以内に勾留請求、裁判官の勾留質問 |
| 捜査段階の拘束期間 | 警察段階で最大10日、検察段階で10日+判事の許可により1回に限り最大10日延長(逮捕された日から起算) | 勾留10日+延長最大10日 |
| 起訴前拘束の上限(逮捕から) | 最長およそ30日 | 最長23日 |
| 拘束を争う主な制度 | 逮捕・拘束適否審査(捜査段階)、保釈(起訴後) | 準抗告・勾留取消し・保釈(起訴後)など |
根拠となるのは刑事訴訟法第202条(警察段階10日)、第203条(検察段階10日)、第205条(1回に限る延長)、第203条の2(逮捕日からの起算)です。日本側の記載は日本法の一般的な説明の参考にとどまり、正確な取り扱いは日本の専門家にご確認ください。重要なのは、韓国では起訴前の身柄拘束が日本より長く続き得るという事実、そしてその間に捜査が集中的に進むという現実です。起訴された後は、被告人としての拘束という別の枠組みに移ります。
拘束された後に争う制度 — 適否審査と保釈
拘束が決まった後も、争う制度は用意されています。捜査段階では、逮捕・拘束の適否審査を法院に請求することができ、法院は請求書の接受から48時間以内に被疑者を審問して、理由があれば釈放を命じます(刑事訴訟法第214条の2)。請求できるのは本人だけでなく、配偶者・直系親族・兄弟姉妹・同居人・雇用主などにも認められています。起訴後には保釈の制度があります。
ただし、これらはいずれも法院の裁判手続きであり、どの時点で、どの資料を基礎に、何を疎明して臨むかによって結論が分かれます。制度が存在することと、それが認められることの間には距離があり、その距離を埋めるのは事案ごとの構成です。時間が経つほど選べる手は減っていきます。
日本人・外国人が直面する現実 — 言葉・情報・在留資格
日本人の駐在員や旅行者、その家族にとって、韓国での逮捕・拘束は制度の違い以上の困難を伴います。まず言葉です。取調べも、実質審査も、記録もすべて韓国語で進みます。通訳人は付きますが、法的な意味合いを含む微妙な言い回しがそのまま伝わるとは限らず、捜査初期の供述はその後の手続きの進行と結果に重要な影響を与え得ます。何をどう話すかの判断を、言葉のハンディを抱えたまま独力で行うのは容易ではありません。
次に情報の空白です。家族が日本にいる場合、本人との連絡は制限され、「いまどの段階にいるのか」「次に何が起きるのか」が分からないまま時間だけが過ぎていきます。弁護人には身柄を拘束された被疑者との接見交通権が法律上保障されており(刑事訴訟法第34条)、弁護人を通じて本人の状態を把握することが、実務上最も確実な経路になります。
さらに在留資格と出国の問題が重なります。捜査の対象になっていることは出国停止の根拠となり得ますし、有罪が確定すれば在留資格の審査で不利に考慮される可能性もあります。ただし、これらは自動的に決まるものではなく、罪名・処分の内容・在留資格・韓国での生活関係などを総合した当局の裁量による個別判断です。だからこそ、刑事事件への対応と在留・出国の問題は切り離さずに設計する必要があります。駐在員であれば、会社への報告や業務との関係という現実的な問題も同時に走ります。
弁護人は何をするのか — 48時間の中での初期対応
逮捕直後の段階で弁護人が果たす役割は、単なる「同席」ではありません。接見を通じて本人の状態と事実関係を把握し、実質審査・適否審査という短い期日に向けて、事案に応じた主張と資料を組み立てます。実質審査の段階で弁護人がいない場合には国選弁護人が選定されますが、言葉の問題を抱える外国人の事件では、日本語で意思疎通ができ、逮捕直後から動ける弁護人を早期に選任できるかどうかが、実務上の大きな分かれ目になります。
当事務所は、駐在員・旅行者を含む外国人依頼人の刑事事件を、捜査段階の身柄対応から継続的に取り扱ってきました。日本語での相談が可能で、日本にいるご家族からのご依頼にも対応しています。韓国での逮捕・拘束は時間との勝負であり、相談が早いほど、取り得る選択肢は広くなります。
この記事のポイント
・韓国の逮捕には逮捕状・緊急逮捕・現行犯の3類型があり、身柄拘束を続けるには逮捕から48時間以内の拘束令状請求が必要(刑事訴訟法第200条の2・第200条の4)。
・令状請求の翌日までに判事が被疑者を直接審問する実質審査で拘束が決まる。大法院判例も、この手続きが迅速に進むべきことを制度の前提としており、準備に使える時間は極めて短い。
・捜査段階の拘束は警察10日・検察10日(+1回に限り最大10日延長)で、逮捕日から起算して最長およそ30日。日本の勾留(参考:最長23日)より長くなり得る。
・在留資格・出国停止への影響は当局の裁量による個別判断で、自動ではない。刑事対応と在留の問題は併せて検討し、初期対応の早さが選択肢の幅を左右する。
よくある質問
Q. 韓国で逮捕されたら、拘束(勾留)はいつ決まりますか?
捜査機関が身柄の拘束を続けるには、逮捕した時から48時間以内に拘束令状を請求しなければならず、請求しないときは直ちに釈放しなければなりません(刑事訴訟法第200条の2第5項・第200条の4)。令状が請求されると、判事は特別な事情がない限り請求日の翌日までに被疑者を直接審問し(拘束前被疑者審問・実質審査)、拘束するかどうかを決定します。逮捕から数日以内に身柄の帰すうが決まる、非常に速い手続きです。
Q. 韓国の「拘束」は日本の勾留とどう違いますか?
韓国の拘束は日本の勾留に相当する身柄拘束ですが、期間の構造が異なります。韓国では警察段階で最大10日、検察段階で10日(判事の許可により1回に限り最大10日まで延長可能)とされ、この期間は逮捕された日から起算されます(刑事訴訟法第202条・第203条・第205条・第203条の2)。起訴前の身柄拘束が最長でおよそ30日に及び得る点で、日本(参考:逮捕から最長23日)より長くなり得ます。
Q. 家族が日本にいる場合、何ができますか?
逮捕・拘束された本人と自由に連絡を取ることは難しく、一般の面会には制限があり得ます。一方、弁護人または弁護人になろうとする者には、身柄を拘束された被疑者と接見し、書類や物を授受できる接見交通権が法律上保障されています(刑事訴訟法第34条)。また、逮捕・拘束の適否審査を請求できる者には、本人のほか配偶者・直系親族・兄弟姉妹・同居人・雇用主も含まれています(同法第214条の2)。日本にいるご家族が韓国の弁護士に依頼し、弁護人を通じて本人の状態と手続きの段階を把握することが、実務上最も確実な経路になります。
Q. 逮捕・拘束は在留資格(ビザ)や出国に影響しますか?
影響し得ますが、自動的に決まるものではありません。刑事手続と出入国上の措置は別個に判断されます。捜査の対象になっていることは出国停止の根拠となり得るほか、有罪が確定した場合には、在留期間の更新や在留資格の審査で不利に考慮される可能性があります。ただし、いずれも当局の裁量による個別判断であり、罪名・処分の内容・在留資格・韓国での生活関係などを総合して決まります。刑事弁護と在留・出国の問題は、切り離さずに併せて検討する必要があります。韓国における外国人の刑事事件全般については外国人のための刑事弁護のページも参考にしてください。
韓国の身柄手続きは48時間単位で動きます。
ご本人のことでも、日本にいるご家族・会社の方からのご連絡でも、まずは現在の段階の確認から。日本語でご相談いただけます。
金平浩弁護士(キム・ピョンホ)
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。2021年 大韓弁護士協会 優秀弁護士賞受賞。
2014年以来、民事・刑事・家事など全分野で累計500件以上の事件を担当。
本記事は一般的な法律情報であり、個別事案についての法的助言ではありません。逮捕・拘束の適法性や身柄判断の結果は、個別の事実関係と証拠によって変わり得ますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
여해법률사무소(ヨヘ法律事務所)— 韓国における外国人のための法律相談。