「韓国に駐在して数年、ある日空港で『あなたは出国できません』と告げられた」——韓国で犯罪の捜査や裁判の対象になった外国人が、出国禁止(外国人の場合は「出国停止」)の措置を受け、日本に帰れなくなるケースがあります。韓国 出国禁止は出入国管理法に基づく行政処分で、いったん対象になると、定められた期間中は帰国や出張が制限され、必要に応じて延長されることもあります。そのため、事件の進行によっては韓国に長くとどまらざるを得ない重大な不利益が生じます。本記事では、日本人の駐在員・旅行者が韓国で出国禁止(出国停止)になる要件、期間、そして解除の可能性について、韓国弁護士が解説します。
「出国禁止」と「出国停止」— 韓国人と外国人で呼び方が異なる
出入国管理法では、韓国国民に対する措置を「出国禁止」(第4条)、外国人に対する措置を「出国停止」(第29条)と区別しています。日本人を含む外国人については、第29条第1項が第4条第1項・第2項の事由に当たる場合の「出国停止」を定め、第29条第2項が出国禁止の手続・延長・通知・異議申立てに関する規定を準用しています。本記事では読みやすさのため、両者をまとめて「出国禁止」と表記する場面があります。
| 区分 | 対象 | 名称 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 国民 | 韓国国民 | 出国禁止 | 出入国管理法 第4条 |
| 外国人 | 日本人など | 出国停止 | 出入国管理法 第29条(第4条を準用) |
なぜ駐在員・旅行者が韓国で出国禁止になるのか
出国禁止の対象は、出入国管理法第4条が定める一定の事由に該当する人です。外国人の場合も第29条によって同じ事由が準用されます。日本人の駐在員・旅行者が問題となりやすいのは、主に刑事手続きに関係する次の場合です。
| 主な出国禁止事由 | 根拠 |
|---|---|
| 犯罪捜査のため出国が適当でないと認められる人 | 第4条第2項 |
| 刑事裁判が係属中の人 | 第4条第1項第1号 |
| 懲役刑・禁錮刑の執行が終わっていない人 | 第4条第1項第2号 |
| 一定額以上の罰金・追徴金を納めていない人 | 第4条第1項第3号 |
| 一定額以上の国税・関税・地方税を正当な理由なく滞納している人 | 第4条第1項第4号 |
駐在員・旅行者が最も直面しやすいのは、第4条第2項の「犯罪捜査のため出国が適当でない」場合です。詐欺・横領などの財産犯、交通事故、性犯罪、薬物事件などの嫌疑で捜査が始まると、被疑者の身柄を確保する必要があるとして出国停止が要請されることがあります。ただし、これは「捜査対象になれば必ず出国できなくなる」という意味ではありません。出入国管理法は「出国を禁止することができる」と定める裁量的な規定であり、事案の内容や逃走のおそれなどを踏まえて個別に判断されます。
韓国 出国禁止の期間はどれくらいか
出国禁止の期間は、その事由によって異なります。犯罪捜査を理由とする場合は原則1か月以内ですが、所在不明・逃走などで捜査進行が困難な場合は3か月以内、逮捕状・勾留状が発付されている場合は令状の有効期間内とされる例外があります。刑事裁判が係属している場合などはより長くなることがあり、必要があれば法務部長官が期間を延長することができます(第4条の2)。
| 事由 | 期間(原則) |
|---|---|
| 犯罪捜査のため(第4条第2項) | 1か月以内(事案により異なる期間・延長あり) |
| 刑事裁判の係属など(第4条第1項) | 6か月以内(延長あり) |
重要なのは、「とりあえず1か月だから待てばよい」と考えるのが危険だということです。捜査が継続している限り延長され得るため、いつ解除されるかは事件の進み方に左右されます。期間の見通しは、捜査・裁判がどの段階にあるかによって大きく変わります。
日本人にとって何が深刻か — 帰国・在留資格への影響
出国禁止(出国停止)の最大の問題は、事件の進行中に日本への帰国や海外出張が一定期間制限され、必要に応じて延長される可能性があることです。駐在員であれば本社への帰任、家族との生活、旅行者であれば仕事や予定への影響は計り知れません。短期滞在で訪れていた人が、捜査の進行を待つために韓国に長期間とどまらざるを得なくなることもあります。
さらに、刑事事件の結果は在留資格にも影響し得ます。ただし、有罪となれば当然に強制退去になる、ビザが自動的に取り消される、というものではありません。出入国管理法上の退去強制は「~することができる」とされる裁量的な措置であり、罪名・宣告刑・執行猶予の有無・在留資格の種類・韓国内の生活関係などを総合して個別に判断されます。出国停止と在留資格の問題はそれぞれ別個の手続きであり、状況によっては両方への対応が必要になります。韓国の刑事事件・外国人弁護のページもあわせてご参照ください。
韓国 出国禁止は解除できるのか — 異議申立てと司法審査
出国禁止は、いったん決まったら絶対に動かせないものではありません。出入国管理法は、出国禁止の決定に対する異議申立ての制度を設けており(第4条の5。外国人の出国停止にも準用)、さらに行政訴訟によって処分の適法性を争うこともできます。
韓国の裁判所も、出国の自由は憲法が保障する居住・移転の自由の一内容であり、その制限は必要最小限にとどまるべきだとしています。大法院は、租税の滞納を理由とする出国禁止が問題となった事件で、出国禁止は財産を海外に逃避させて強制執行を困難にすることを防ぐなどの目的によるものであって、本人の身柄を確保したり、出国の自由を制限して心理的圧迫を加え滞納税を自主納付させるための手段ではないと判断し、要件を確認しないままなされた出国禁止は過剰禁止の原則に反して許されないとしました(大法院 2013年12月26日宣告 2012두18363 判決)。
この判決は租税事案に関するものですが、出国禁止が「法律上の要件を満たしているか」「比例原則に反していないか」という観点から司法審査の対象になることを示しています。もっとも、どのような事実があれば解除が認められるかは事案ごとに大きく異なり、捜査・裁判の進行状況、すでに行った供述、逃走のおそれをめぐる評価などが複雑に絡みます。一般論として制度の存在を知ることと、自分の事件で実際に解除を得られるかどうかは別の問題です。
外国人の刑事事件は、原則として韓国語で進行し、捜査・裁判と出入国の手続きが同時並行で動きます。出国停止の解除を検討する場面でも、捜査機関がどの事由で出国を制限しているのか、事件全体の見通しはどうかを踏まえて対応する必要があり、外国にいる本人だけで現実的に進められる手続きではありません。当事務所は、在韓外国人の刑事事件と、それに伴う出入国上の問題を併せて扱ってきました。早い段階で韓国の弁護士に相談することで、取り得る選択肢は広がります。
この記事のポイント
・日本人など外国人への措置は「出国停止」(第29条)で、要件・手続きは「出国禁止」(第4条)を準用する。
・駐在員・旅行者が直面しやすいのは「犯罪捜査のため出国が適当でない」場合(第4条第2項)。捜査対象になれば自動的にではなく、逃走のおそれなどを踏まえた裁量判断。
・期間は事由により異なり、必要に応じて延長され得る(第4条の2)。事件が長引けば出国できない状態も続く。
・有罪=当然に強制退去・ビザ取消しではなく、在留資格への影響は別個の手続きで個別判断される。
・出国禁止には異議申立て・行政訴訟という不服申立ての道があり、司法審査の対象になる(大法院2012두18363判決)。
よくある質問(FAQ)
Q. 韓国で犯罪の捜査対象になると、必ず出国禁止になりますか?
A. いいえ。出国禁止(外国人は出国停止)は、犯罪捜査のため出国が適当でないと認められる場合などに、法務部長官が行うことができる裁量的な措置です(出入国管理法第4条第2項・第29条)。捜査対象になれば自動的に出国できなくなるわけではなく、事案の内容や逃走のおそれなどを踏まえて個別に判断されます。
Q. 出国禁止の期間はどれくらいですか?
A. 犯罪捜査を理由とする場合は原則1か月以内、刑事裁判の係属など第4条第1項の事由による場合は6か月以内が原則です。ただし、必要があれば期間が延長されることがあり(第4条の2)、事件が長引く間は出国できない状態が続くことがあります。
Q. いったん出国禁止になったら、解除はできませんか?
A. 出入国管理法は出国禁止の決定に対する異議申立て制度を設けており、行政訴訟で処分の適法性を争うこともできます。韓国の裁判所も出国の自由の制限は必要最小限であるべきだとしています(大法院2012두18363判決)。ただし解除が認められるかは事案により大きく異なるため、早期に韓国弁護士へ相談することが重要です。
韓国で出国禁止・出国停止になってお困りの方へ
出国できない理由(捜査か裁判か)、事件の段階、在留資格——これらの組み合わせ次第で、取り得る対応と見通しは大きく変わります。ご自身の状況が本文の説明とどう異なるかが分からない場合は、まずLINEで基本的な状況をお知らせください。韓国弁護士が確認のうえご返答します。
Pyoung-ho Kim 弁護士 (金平浩 / キム・ピョンホ)
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。
2021年 優秀弁護士賞受賞。
2014年以来、民事・刑事・家事など全分野で累計500件以上の事件を担当。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の事件に関する法的アドバイスではありません。実際の対応は事案により異なります。