韓国 離婚 慰謝料 — 当事務所の実務から

当事務所の実務でも、韓国で離婚を検討している日本人の方から「韓国 離婚 慰謝料はどのように請求するのか」「不倫の証拠があれば相手や交際相手にも請求できるか」「日本と比べて金額はどう違うのか」というご相談が増えています。特に、配偶者の不倫(不貞行為)や家庭内暴力(DV)を理由とする離婚では、慰謝料の問題が離婚手続の中核を占めることも少なくありません。

韓国法における慰謝料(위자료)は、日本の慰謝料と概念的には似ていますが、請求できる相手の範囲、時効の起算点、金額の認定基準など、実務上の取り扱いに重要な違いがあります。以下では、韓国法の慰謝料制度の骨格と、日本人の方が特に注意すべき点を解説します。


韓国 離婚 慰謝料の法的根拠 — 韓国民法の規定

裁判上の離婚に伴う損害賠償については、韓国民法第843条が第806条を準用しています。精神的損害の賠償は、民法第750条・第751条の不法行為責任とも関連して判断されます。離婚を原因とする慰謝料(위자료)は、こうした規定が組み合わさって根拠とされています。

韓国民法第840条は、裁判上の離婚が認められる事由として以下を列挙しています:

  • 不貞行為(부정행위)
  • 悪意の遺棄(악의의 유기)
  • 配偶者またはその直系尊属からの著しく不当な扱い(부당한 대우)
  • 自己の直系尊属に対する著しく不当な扱い
  • 配偶者の生死不明(3年以上)
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

これらの離婚原因のうち、配偶者の有責・違法な行為によって婚姻関係が破綻し、精神的損害が認められる場合には、離婚請求とあわせて慰謝料請求が問題となります。なお、配偶者の生死不明など相手方の帰責が明確でない事由については、慰謝料が当然に認められるわけではありません。


不倫(不貞行為)を原因とする慰謝料

不倫(불정행위)は、韓国でも最も多い離婚慰謝料の原因となっています。韓国大法院(最高裁判所)は2026年1月29日の判決(2025므10716)において、「第三者が夫婦の一方と不貞行為をした場合、それが原則として不法行為を構成し、配偶者と第三者が負う不法行為責任は共同不法行為責任として不真正連帯債務の関係にある」と明示しました。このため、配偶者と不倫相手の双方に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

ただし、不倫行為の時点ですでに婚姻関係が実質的に破綻していた場合や、第三者が婚姻の事実を知らなかった場合、あるいは関与の程度を立証できない場合には、相手方への請求が制限または否定されることがあります。請求の可否は個別の事情に依存し、証拠の内容が結論に大きく影響します。

消滅時効については、同判決が、離婚そのものを原因とする慰謝料請求権に関し、婚姻解消時を民法第766条第1項の3年短期消滅時効の起算点と判断しています。なお、離婚とは切り離して個別の不貞行為自体を理由に損害賠償を求める場合は、別途、不法行為として時効や管轄が判断され得ます。長期間別居が続いた後に離婚が成立した場合など、時効の管理は事案ごとに確認が必要です。

日本法でも、誰に対してどの請求をするかによって時効の起算点や期間の検討が必要です。ここでは一般的な不法行為責任との比較にとどめ、具体的な日本法上の時効判断は個別確認が必要です。


DV(家庭内暴力)を原因とする慰謝料

家庭内暴力(가정폭력)は、韓国民法第840条第3号「著しく不当な扱い」に該当し得るものとして、離婚原因および慰謝料請求原因となります。

実務上の難しさは、暴力の立証にあります。韓国でも証拠が揃っていなければ慰謝料請求が認められない、あるいは金額が低く認定されるリスクがあります。日本語しか話せない状況で警察署や病院に一人で対応することは、日本人の方にとって言語的にも精神的にも大きな負担です。

記録として有効となりうるものとしては、診断書・治療記録、警察への通報記録、写真、LINEやメッセージの記録などが挙げられます。ただし、どの証拠がどのように評価されるかは事案によって異なります。


日韓の慰謝料制度 — 主な比較

比較項目 韓国法 日本法
慰謝料の法的根拠 民法第750条・第751条・第843条 民法第709条・第710条
不倫相手への請求 可能(不真正連帯債務) 可能(不真正連帯債務)
消滅時効の起算点 離婚を原因とする請求:婚姻解消時(大法院2025므10716)
個別不貞行為の不法行為請求:別途判断
請求の相手・内容により異なる(個別確認が必要)
時効期間 3年(民法第766条第1項) 原則3年(個別事案による)
金額の算定 個別事情による(婚姻期間・有責性・経済状況等) 個別事情による(同様)
手続き 離婚訴訟と併合請求が一般的 離婚訴訟と併合または別訴可能

日本人の方が直面しやすい問題

日本人の方が韓国で慰謝料請求を行う場合、言語の壁に加えていくつかの実務的な難しさがあります。

まず、韓国の訴訟はすべて韓国語で進められます。訴状や準備書面、相手方の主張、裁判所の決定もすべて韓国語での対応が必要です。翻訳なしに手続きを追うことは困難であり、重要な主張の機会を逃すリスクがあります。

次に、証拠の収集と保全についても、韓国の法的手続きに精通していなければ、有効な証拠として認定されない形で収集してしまうことがあります。特に不倫の証拠については、収集方法によっては逆に問題となる場合もあります。

また、相手方が韓国人配偶者の場合、韓国の家庭環境や親族関係が調停・訴訟の経過に影響することもあります。文化的・社会的背景への理解も、実務上は重要な要素となります。

さらに、韓国での離婚と慰謝料の確定後は、日本の戸籍への反映手続きも必要です。韓国と日本双方の手続きを視野に入れた対応が求められます。詳しくは国際離婚(韓国法・日本法)のご相談ページもご参照ください。


慰謝料請求に関してご相談をお勧めする理由

慰謝料の金額は、婚姻期間、有責性の程度、双方の経済状況、精神的苦痛の内容・程度など、さまざまな事情を総合して判断されます。同じ「不倫」「DV」であっても、事案によって認められる金額や、請求の方法・タイミングが大きく変わります。

また、前述の通り、韓国では離婚成立時から消滅時効が進行するため、離婚が成立した後に時間が経過してから請求を検討した場合、権利の行使が制限されるリスクがあります。

「自分の状況で慰謝料は請求できるか」「金額の目安は」「不倫相手にも請求できるか」といった点が不明確な場合は、韓国の家族法を扱う弁護士に早めに状況を確認されることをお勧めします。LINEにてご状況をお知らせいただければ、基本的な確認から対応いたします。

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また、親権・養育費についてのご相談はこちらの記事もあわせてご参照ください。


Pyoung-ho Kim 弁護士 (キム・ピョンホ)
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。
韓国弁護士協会 家族法専門弁護士登録。2021年 優秀弁護士賞受賞。
2015年以来、500件以上の事件を担当。