離婚後、子どもを連れて生活している方の中には、「元配偶者のもとでは子どもの安全が心配だ」「状況が離婚当時から大きく変わった」と感じるケースがあります。韓国では、離婚時に決まった親権者であっても、その後の事情変更や子どもの福祉に重大な問題が生じた場合、家庭法院(家庭裁判所)への申立てによって親権者を変更することができます

このページでは、在韓日本人または韓国で離婚した日本人の方に向けて、韓国における親権変更(韓国語:친권자 변경)の要件・手続き・審判の流れを弁護士が解説します。


韓国 親権変更 申立て — 根拠条文と判断基準

韓国で離婚後に親権者を変更する場合、中心となる根拠は民法第909条第6項です。家庭法院は、子の福祉のため必要があると認めるとき、子の4親等以内の親族の請求により、既に定められた親権者を他方に変更することができます。

条文の核心は「子の福祉(자녀의 복리)」です。虐待・面会交流の不当な妨害・養育放棄・生活環境の重大な変化などは、条文上の独立要件ではなく、子の福祉を判断するための具体的な事情として裁判所が総合的に評価します。単に「自分の方が良い親だ」という主張だけでは変更は認められず、現在の親権者のもとで子どもが不利益を受けている事実を具体的に示す必要があります。


手続きの概要 — マ類家事非訟事件として申立て

通常の離婚後の親権者変更は、家事訴訟法上のマ類家事非訟事件として家庭法院に申立てます。訴訟手続きとは異なり、裁判所が職権的に事実を調査して「심판(審判)」を下す非訟手続きです。

申立てができる人

民法第909条第6項に基づく申立権者は、子の4親等以内の親族です。非親権者である父または母はこの範囲に含まれます。なお、検察官や地方自治体の長による請求は、親権喪失・親権停止など別の制度として設けられており、通常の親権者変更とは区別されます。

申立て先

子どもの住所地を管轄する가정법원(家庭法院)に申立てます。子どもが日本に居住している場合は、国際裁判管轄や送達の問題が生じるため、事前に弁護士への確認が必要です。


審判で考慮される要素 — 裁判所が見るポイント

家庭法院は、申立人が提出した証拠に加え、調査官(가사조사관)による調査も踏まえて総合的に判断します。事件によっては、調査官が面談・家庭訪問・学校や保育機関への確認などを行うことがあります。主な考慮要素は以下のとおりです。

  • 子どもの意思:年齢・成熟度に応じて考慮。13歳以上は特に重視される傾向
  • 現在の養育環境:住環境・教育・生活の安定性
  • 親権者の養育能力:精神的・経済的・身体的な状況
  • 両親と子どもの絆:日常的な交流・愛着関係の実態
  • 兄弟姉妹との分離:兄弟を引き離す変更は慎重に判断
  • 面会交流への協力意思:非養育親との交流を妨げる親権者は不利に評価される

審判の期間は、争いの程度・子どもの居住地・国際送達や調査の有無によって大きく異なります。6か月から1年以上はあくまで目安であり、複雑な国際事案ではさらに長期化することがあります。


판례から見る判断の方向 — ソウル家庭法院2015브30044決定

ソウル家庭法院2016年2月4日決定(2015브30044,30045)は、親権者である母が面会交流を回避する目的で子どもを日本に移住させた事案を扱いました。裁判所は、その移住という事情変更を、面会交流条件の変更理由として認めませんでした。自ら作出した状況変化を根拠に面会交流を縮減しようとすることは、面会交流制度の趣旨に反するという判断です。

この事件では直ちに親権者・養育者の変更まで認められたわけではありませんが、面会交流妨害が続けば将来の親権者・養育者変更において不利に評価され得ることも示しています。相手方が子どもを国外に連れて行った場合でも、対応策の選択は慎重な法的判断を要します。


日本との制度比較

項目 韓国 日本(2026年4月改正後)
根拠条文 民法第909条第6項 改正民法第819条第6項・第7項
申立人の範囲 子の4親等以内の親族 子またはその親族(改正後)
手続き マ類家事非訟事件 家庭裁判所への審判申立て
判断基準 子の福祉(자녀의 복리)最優先 子の利益最優先
共同親権 協議・審判で共同親権指定が可能 2026年4月1日より共同親権制度開始
審判期間の目安 6か月〜1年以上(事案により異なる) 3か月〜1年程度(事案により異なる)

韓国では従来から協議または審判によって共同親権の指定が可能でした(民法第909条第4項)。この制度差が、日韓夫婦の離婚における親権選択に影響することがあります。


在韓日本人が直面する困難 — 言語・管轄・国際法

日本人が韓国で親権変更を求める場合、国内事案以上の困難が重なります。

  • 言語の壁:申立書・証拠書類はすべて韓国語での作成が必要。子どもの状況を正確に伝えるには法律用語に精通した翻訳・通訳が不可欠です
  • 管轄・送達の問題:子どもが日本に居住している場合、韓国家庭法院の国際裁判管轄が及ぶかどうかの検討と、日本への国際送達手続きが必要になります
  • 両国の登録への反映:審判確定後、韓国の가족관계등록부(家族関係登録簿)と日本の戸籍への反映は、子どもの国籍・各国の登録状況によって手続きが異なります。別途確認が必要です
  • 国外移動とハーグ条約:一方の親の同意や裁判所の許可なく子を国外へ移動・留置する場合、子の常居所・既存の監護権・親権の内容・同意の有無などによって、ハーグ条約上の返還問題や韓国家庭法院での不利な評価につながる可能性があります。移動前に必ず個別の確認が必要です

これらの問題が重なるため、韓国と日本双方の法制度を理解した弁護士の関与が一層重要になります。韓国の子どもの親権・養育問題については、当事務所の専門ページもご参照ください。

また、親権変更と並行して양육비(養育費)の見直しが必要になる場合もあります。韓国における養育費の請求手続きについては別記事で詳しく解説しています。


弁護士への相談が必要な理由

親権変更手続きは、事実の調査・調査官への対応・期日での主張整理など、専門的な対応が求められます。日本語しか話せない方、韓国の法的手続きに不慣れな方が一人で対応することは非常に困難です。個々の事情によって手続きの方向性が大きく異なるため、まずは専門家への相談を強くお勧めします。

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※ 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。実際のご事情については、必ず弁護士にご相談ください。

Pyoung-ho Kim 弁護士 (キム・ピョンホ)
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。
韓国弁護士協会 家族法専門弁護士登録。2021年 優秀弁護士賞受賞。
2015年以来、500件以上の事件を担当。