日韓夫婦が離婚するとき、最も大きな金額が動き、最も合意が難しいのが「不動産」です。韓国 離婚 不動産 財産分与では、自宅マンションや投資用物件を誰がどのように取得するか、名義が一方に偏っているとき他方はどこまで取り戻せるか、価値はいつの時点で評価されるか——この三つが争点の中心になります。日本法の感覚で考えると見誤りやすい論点でもあります。本記事では、韓国の不動産を分けるときの基本ルールと日韓夫婦特有の注意点を、近時の大法院判例を交えて韓国弁護士が整理します。

なぜ不動産が財産分与で最大の争点になるのか

不動産は、預貯金や退職金と違って「分けにくい」資産です。物理的に切り分けられず、評価額をめぐって当事者の主張が大きく食い違い、しかも夫婦財産の大部分を占めることが少なくありません。韓国の住宅は夫(または妻)の単独名義で登記されていることが多く、「名義のない側は何ももらえないのではないか」という不安が、交渉の入り口でつまずく典型的な原因になります。

結論から言えば、韓国法では登記名義だけで分割の結論が決まるわけではありません。重要なのは、その不動産の形成・維持にどれだけ実質的に寄与したか、です。まずこの原則を押さえることが出発点になります。財産分与の全体像については韓国 離婚 財産分与の基準(弁護士解説)もあわせてご覧ください。

登記名義だけで決まらない — 韓国法の「実質的貢献度」原則

韓国民法第839条の2(協議離婚の場合)および第843条(裁判離婚の場合)は財産分割を定めており、その基本原則は「財産の名義にかかわらず、形成・維持への実質的な貢献度に応じて各自の取り分を決める」という点にあります。専業主婦(夫)の家事・育児も間接的な寄与として考慮されます。したがって、自宅が韓国人配偶者の単独名義であっても、日本人配偶者の寄与が認められれば、その不動産は分割の対象になり得ます。

大法院 2025年10月16日宣告 2024므13669, 13676 判決も、財産分与は「財産の名義と関係なく、財産の形成および維持に寄与した程度など実質に従って各自の取り分を分けて帰属させる制度である」と改めて確認しています。同判決は、配偶者の親など第三者による経済的・非経済的な支援が財産の形成・維持に寄与した場合には、それを当該配偶者の寄与として参酌し得る一方、その寄与の内容が著しく反社会的・反倫理的である場合には参酌できないという限界も示しました。誰のどのような関与を寄与として評価するかは、事案ごとの個別判断になります。

相続・贈与で得た不動産(特有財産)はどうなるか

「この家は親から相続したものだから渡したくない」「結婚前に買った物件だ」という主張は、日韓双方でよく見られます。韓国法では、婚姻前から所有していた不動産や、相続・贈与で取得した不動産は原則として「特有財産」として分割対象から外れます。ただし、これは絶対ではありません。婚姻後に配偶者がその不動産の維持や価値増加に実質的に寄与していれば、その寄与分が参酌され、結果として分割の調整要素になり得ます。

項目 韓国法 日本法(参考)
名義の扱い 名義に関係なく、形成・維持への実質的貢献度で判断 実質的に夫婦の共有財産といえるかで判断
相続・贈与・婚姻前取得の不動産 原則は分割対象外(特有財産)。ただし配偶者が維持・価値増加に寄与していれば、その寄与分が参酌される 原則として清算的財産分与の対象外
評価の基準時点 原則として事実審の弁論終結日 明文規定なし(実務上は口頭弁論終結時)
請求期間 離婚した日から2年(除斥期間/民法第839条の2第3項) 離婚のときから2年(除斥期間)

※ 日本法の欄は理解を助けるための一般的な参考であり、日本側の取扱いについては日本の弁護士・専門家にご確認ください。

不動産の価値は「いつの時点」で評価するのか

不動産は時期によって価格が変動するため、評価の基準時点は分与額を大きく左右します。韓国では、財産分与の対象財産は原則として事実審の弁論終結日を基準に確定するのが実務です。前掲の大法院 2025年10月16日宣告 2024므13669, 13676 判決は、この基準時点について重要な調整ルールを示しました。

すなわち、婚姻関係が破綻した後に弁論終結日までの間に生じた財産変動が、婚姻中に共同で形成した財産関係と無関係であるなど特別な事情がある場合には、その変動後の財産は分割対象から除外しなければならない、と判示しています。一方で、破綻後に夫婦共同生活や共同財産の形成・維持と関係なく一方が積極財産を処分した場合には、その財産をなお保有しているものとみなして分割対象に含め得る、ともしています。つまり「破綻後に勝手に処分すれば分割を免れる」という単純な話ではない、ということです。下のタイムラインが、評価をめぐる時間の流れのイメージです。

① 婚姻・財産形成
夫婦が共同で不動産を取得・維持。名義は問わず寄与が積み上がる時期。

② 婚姻破綻
別居など。以後の「無関係な」財産変動は対象から除外され得る。

③ 事実審の弁論終結日
原則としてこの時点を基準に対象財産・評価額を確定。

不動産の分け方 — 実務の中心は「代償分割」

協議でまとまらず裁判所が分割を判断する場合、不動産については実務上、主に次の二つの方法がとられます。どちらになるかは、当事者の希望、居住の継続、ローンの残債、他の財産とのバランスなどを総合して判断されます。実務で最も多く用いられるのは、一方が不動産を取得して他方に金銭で清算する「代償分割」です。

方法 内容 主に使われる場面
代償分割(価額分割) 一方が不動産を取得し、他方に持分相当額を金銭で清算する。実務でよく検討される 自宅を維持したい、または相手の取り分を金銭で精算したい場合
現物分割 不動産そのものを一方が取得する、または持分で分ける 一方が自宅に住み続け、他の財産で全体のバランスをとれる場合

なお、不動産を競売にかけて代金を分ける「換価(競売)分割」は、本来は共有物分割(民事訴訟)で用いられる方法です。財産分与の実務で家庭裁判所がこれを直接命じることは多くありません。離婚後も不動産が共有のまま残ってしまった場合などには、別途、民事の共有物分割訴訟で処理されることもあります。どの枠組みで、どの順序で進めるべきかは財産の状況によって変わるため、見通しを立てたうえで着手することが重要です。

「相手が不動産を処分してしまうのでは」という不安

離婚を切り出した途端、相手が不動産を売却したり名義を移したりするのではないか——日韓夫婦の相談で頻繁に出る懸念です。前述のとおり、破綻後に共同財産と無関係に処分された積極財産は、なお保有しているものとみなして分割対象に含められる場合があります。また韓国の家庭裁判所は、事案に応じて財産目録の提出、金融取引情報の提出命令、登記・登録資料の照会などを通じて財産関係を確認することがあります。

実務上、相手方による処分が現実的に心配される場合には、財産分与請求権を保全する目的で、訴訟・審判に先立って不動産に対する仮差押え(韓国の保全処分)を申し立てておく必要があるケースが少なくありません。仮差押えは本案の財産分与とは別個の手続で、被保全権利や保全の必要性といった要件を満たすかを個別に検討する必要があり、申立てのタイミングが結果を左右することもあります。相手が不動産を処分してしまう前に動けるかどうかは、後の財産分与の実効性を大きく左右します。

もっとも、こうした手段を実際に利用できるかどうか、どの範囲まで認められるかは、申立ての内容・証拠状況・裁判所の判断によって異なります。「処分されたら終わり」でも「いつでも取り戻せる」でもなく、早い段階で弁護士に相談し、保全の要否を含めて方針を立てておくことが、結果を分ける実務の現実です。

日韓夫婦が直面する不動産特有の壁

韓国に所在する不動産は、原則として韓国での手続を通じて分けることになります。ここに、日韓夫婦ならではの難しさが重なります。第一に、準拠法・管轄の問題です。どの国の法律が適用され、どの国の裁判所で進めるかは、国籍・常居所・財産の所在地などにより判断が分かれます(管轄の整理は国際離婚の管轄(韓国か日本か)をご参照ください)。第二に、登記簿や家族関係証明書など韓国側の資料の取得・翻訳・認証に時間と費用がかかること。第三に、申立書・主張書面はすべて韓国語で作成する必要があり、評価額や寄与の主張といった微妙な部分でニュアンスの齟齬が不利に働きやすいことです。

さらに、財産分与請求には離婚した日から2年という除斥期間があります。「日本に帰国してから落ち着いて考えよう」と先延ばしにしているうちに期間が経過し、請求自体ができなくなるおそれがあります。退職金や年金も分割の対象になり得るため、不動産だけでなく財産全体を見たうえで戦略を立てる必要があります(年金の扱いは韓国 離婚 年金分割の解説をご覧ください)。

不動産が絡む財産分与に、なぜ韓国弁護士の関与が重要か

不動産が中心となる財産分与は、評価額の立証、寄与度の主張、特有財産との切り分け、相手方の処分への備え、そして国際的な手続調整が同時に問題になります。これらは互いに連動しており、ひとつの判断が他に影響します。当事務所は、財産分与を「請求する側」「防御する側」の双方の事件を扱ってきました。同じ争点を両側から見てきた経験は、紛争が顕在化した後に主張をどう組み立てるかの場面で違いを生みます。情報だけでは判断しきれない部分にこそ、弁護士が関与する意味があります。

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よくあるご質問(FAQ)

Q1. 自宅が韓国人配偶者の単独名義です。日本人の私は不動産をもらえないのですか?

韓国法では、財産分与は登記名義に関係なく、その不動産の形成・維持への実質的な貢献度に応じて判断されます。専業主婦(夫)の家事・育児も間接的な寄与として考慮されます。したがって単独名義であっても、寄与が認められれば分割の対象になり得ます。ただし分与の割合は婚姻期間・財産形成の経緯・貢献度などを総合して個別に決まるため、見通しは事案ごとの確認が必要です。

Q2. 結婚前に夫が買った家や、親から相続した不動産も分けてもらえますか?

婚姻前に取得した不動産や、相続・贈与で得た不動産は、原則として特有財産として分割対象から外れます。ただし、婚姻後にあなたがその維持や価値増加に実質的に寄与していれば、その寄与分が参酌され、調整の要素になり得ます。どこまでが特有財産で、どこからが寄与として評価されるかは、具体的な事情によって結論が変わります。

Q3. 不動産の価値はいつの時点で評価されますか?

韓国では、対象財産は原則として事実審の弁論終結日を基準に確定するのが実務です。大法院 2025年10月16日宣告 2024므13669, 13676 判決は、婚姻破綻後に生じた財産変動が共同財産と無関係であるなど特別な事情がある場合には、その変動分を対象から除外すべきとする一方、共同財産と無関係に処分された積極財産はなお保有しているものとみなして対象に含め得るとしています。評価をめぐっては個別の事情が重要になります。

Q4. 離婚してから時間が経ってしまいました。今からでも不動産の分与を請求できますか?

財産分与の請求には、離婚した日から2年という除斥期間があります(民法第839条の2第3項)。この期間を過ぎると請求自体ができなくなるため、不動産が関わる場合は特に早めの確認をおすすめします。すでに離婚が成立している場合は、残された期間と韓国所在財産の状況をふまえた個別の検討が必要です。

Q5. 相談は日本からオンラインでできますか?

はい。日本国内からのビデオ相談・LINE相談(@243hjkda)に対応しています。韓国所在の不動産・家族関係証明書などの資料についても、取得の見通しを含めてご案内します。ご都合の良い時間帯にお気軽にお問い合わせください。


キム・ピョンホ(Kim Pyoungho/金平浩)弁護士
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。
大韓弁護士協会 離婚専門弁護士登録。2021年 優秀弁護士賞受賞。
2014年以来、全分野累計500件以上の事件を担当。

※ 本記事は一般的な法情報の提供を目的としたものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。実際のご判断にあたっては弁護士にご相談ください。記載の法令・判例は執筆時点のものです。