韓国に駐在中、あるいは出張・旅行で滞在中に、思いがけず「性犯罪の被疑者」として警察から連絡を受ける相談は実際にあります。韓国の性犯罪は処罰が重く、事案によっては手続が短期間で進み、有罪となれば在留資格の更新・変更、将来の再入国、民事上の責任に影響する可能性があります。ただし出入国上の処分は刑事判決とは別に、個別事情を踏まえて判断されます。問われている罪が何で、最初の数日に何が重要なのかを正しく理解しておくことが、この立場に置かれた方にとって何より大切です。

韓国法は性犯罪をどう分類するか

韓国の性犯罪は、まず刑法(형법)が中心的な罪を定め、加重事由がある場合には性暴力犯罪の処罰等に関する特例法(성폭력범죄의 처벌 등에 관한 특례법。以下「性暴力処罰法」)がより重い処罰を定める、という二層構造になっています。主な類型は次のとおりです。

罪名 韓国語・条文 中心となる要件 法定刑
強姦 강간(刑法第297条) 暴行または脅迫による姦淫 3年以上の有期懲役
強制わいせつ 강제추행(刑法第298条) 暴行または脅迫によるわいせつ行為 10年以下の懲役、または1,500万ウォン以下の罰金
準強姦・準強制わいせつ 준강간・준강제추행(刑法第299条) 心神喪失または抗拒不能の状態を利用した姦淫・わいせつ行為 それぞれ強姦・類似強姦・強制わいせつの例による(刑法第297条、第297条の2、第298条参照)

これらに加え、被害者が未成年であった場合、凶器の使用、地位・職務上の関係の利用、同意のない撮影・流布(いわゆる盗撮・リベンジ被害)など、事案の事情によっては性暴力処罰法や青少年保護関連法の加重類型が適用されることがあります。どの罪が問題になるかは、刑法・性暴力処罰法・関連法を横断して検討する必要があります。

「強制わいせつ」の範囲は、日本人が思うより広い

日本から来た方が最も誤解しやすいのが、強制わいせつ(강제추행)の射程です。韓国では、抱きつく・身体を触る・無理にキスをするといった接触が、その場の状況によっては強制わいせつに当たり得ます。さらに、相手の隙を突くような突然の身体接触については、その行為自体が暴行にあたると評価される場合があり、「強い力を加えていないから問題ない」という感覚は通用しません。

もっとも、ある行為がわいせつ行為に当たるか、そして行為者にわいせつの故意があったかは、当事者の関係・接触に至った経緯・接触の具体的態様・周囲の客観的状況といった事情を踏まえ、個別に判断されます。大韓民国大法院2024年8月1日宣告2024도3061判決も、わいせつ行為への該当性と故意の有無を、こうした具体的事情に即して慎重に判断すべきものとし、故意について合理的な疑いが残る場合には、嫌疑が重大であっても立証の基準が下がることはなく、無罪とすべきであると判示しています。告訴があったという事実だけで結論が決まるわけではなく、韓国の刑事手続でも捜査・起訴・審理の役割は制度上分けられています。

告訴された後に何が起きるか — 外国人に特有のリスク

警察に告訴(고소)が受理されると、捜査が始まります。一般的な流れは、警察の捜査 → 検察の検討 → (請求される場合)拘束令状の判断 → 起訴 → 公判です。事案によっては、警察連絡から初回取調べ、出国停止や拘束令状の検討までが短期間に進むことがあります。ただし令状請求の有無は、罪名・証拠関係・逃亡や証拠隠滅のおそれ・韓国内の生活基盤によって個別に判断されます。

外国人の場合、各段階で「逃亡のおそれ」という要素が判断を大きく左右します。短期滞在ビザの方や韓国内に定まった生活基盤がない方については、出国によって手続が終わってしまうリスクが現実的なものとして扱われるため、身柄拘束が請求されやすい傾向があります。長期の在留資格を持ち、韓国内に安定した生活関係があることはこのリスクを下げますが、なくすわけではありません。

同じ理由から、捜査・裁判の進行中に出国停止(출국정지)がとられる可能性もあります。これは出入国管理法に基づく措置で、事件の経過によっては予定していた帰国や出張ができなくなることを意味します。在留資格やビザへの影響については、捜査中であること自体が更新・変更審査で不利に考慮される可能性があり、実刑等を伴う有罪が確定すれば、出入国当局が在留措置を検討する根拠の一つにもなり得ます。ただし、いずれも当局の裁量判断であって自動的に生じるものではなく、罪名・量刑・在留資格・生活関係などを総合した個別判断になります。また、一定の性犯罪で有罪が確定した場合には、身上情報の登録・公開等の対象となることがありますが、これも罪名・量刑や裁判所の命令の有無による別個の効果です。

裁判所が適用する立証の基準

韓国でも有罪とするには「合理的な疑いを超える証明」が必要です。前述の2024도3061判決が示すとおり、強制わいせつ事件では、検察が個々の行為について客観的な行為わいせつの故意(고의)の双方を立証しなければならず、故意に合理的な疑いが残るならば、たとえ裁判所が一定の嫌疑を抱いたとしても無罪とすべきものとされています。嫌疑が重大であることを理由に証明の基準が緩められることはありません。

もっとも、これは「事実関係をどう構成すれば有利か」が定型的に決まることを意味しません。当事者の関係、接触に至った経緯、すでに行われた供述、捜査機関の見立てなど、事案ごとの細部によって評価は大きく変わります。だからこそ、自分の事案にどの事情がどう作用するのかの見極めには、専門的な判断が欠かせません。

最初の対応が、その後の結果を分ける

性犯罪事件で最も重要な判断は、被疑者が自分の置かれた状況を十分に理解する前——つまりごく早い段階で下されることが少なくありません。韓国の刑事手続では、被疑者には供述拒否権(진술거부권)と、警察・検察の取調べに弁護人を立ち会わせる権利が認められています。これらの権利を早期に行使することは罪を認めることではなく、重大な嫌疑に直面した人にとっての標準的な対応です。

取調べはすべて韓国語で進みます。十分な準備のないまま、あるいは弁護人の関与がないままに行った初期の対応は、その後の裁判の進行・結果に重要な影響を与え得ます。具体的にどの権利をどの順序でどう行使するかは事案ごとに異なり、一般論として語れるものではありません。確かなのは、対応が遅れるほど選べる選択肢が狭まるということです。外国人の刑事事件は、捜査・公判の各段階が在留資格と結びつき、すべて韓国語で進むため、韓国内で経験のある弁護士の関与が現実的に重要になります。

この記事のポイント

・強制わいせつ(刑法第298条)の射程は広く、軽い身体接触でも状況により問われ得る。法定刑は10年以下の懲役または1,500万ウォン以下の罰金。

・外国人は「逃亡のおそれ」を理由に身柄拘束が請求されやすく、捜査中に出国停止がとられる可能性もある。

・在留資格や強制退去への影響は自動ではなく、当局の裁量による個別判断(刑事手続とは別個)。

・告訴の事実だけで結論は決まらない。検察はわいせつの故意も立証する必要があり、最初の数日の対応が結果を左右する。

よくある質問

Q. 韓国で性犯罪に問われたら、すぐに逮捕されますか?

必ず逮捕されるわけではありません。逮捕には罪名の重さや、逃亡・証拠隠滅のおそれといった拘束事由が必要で、逮捕後に身柄拘束を続けるには原則48時間以内に拘束令状を請求し、裁判所の判断を受けます。令状が却下されれば釈放されます。ただし短期滞在ビザの外国人や、韓国内に定まった生活基盤がない場合は、逃亡のおそれを理由に拘束が請求されやすい傾向があります。

Q. 過去に交際関係や合意があれば、性犯罪に問われることはないのですか?

そうとは限りません。現行の韓国法では、過去の交際関係や婚姻関係があること自体が責任を免れさせるものではありません。暴行・脅迫等の構成要件は検察が立証しなければなりませんが、当事者間の関係は、裁判所が事案全体の事情を評価する際の一要素として考慮されます。

Q. 性犯罪の有罪判決は、在留資格やビザにどう影響しますか?

影響し得ますが、自動的に決まるものではありません。刑事手続と出入国上の処分は別個に判断されます。捜査中であることが在留期間の更新・資格変更の審査で不利に考慮される可能性はあり、実刑等の重い性犯罪の前科は強制退去を検討する根拠の一つになり得ます。ただしこれは出入国当局の裁量判断で、罪名・量刑・在留資格・生活関係を総合した個別判断です。

関連する韓国の刑事手続については、韓国の刑事事件(外国人向け)のページや、韓国の麻薬刑罰に関する解説もあわせてご覧ください。

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金平浩弁護士(キム・ピョンホ)
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。2021年 大韓弁護士協会 優秀弁護士賞受賞。
2014年以来、民事・刑事・家事など全分野で累計500件以上の事件を担当。

本記事は一般的な法律情報であり、個別事案についての法的助言ではありません。具体的な事案については弁護士にご相談ください。
여해법률사무소(ヨヘ法律事務所)— 韓国における外国人のための法律相談。