要点

韓国では、相手の意思に反して正当な理由なく接近・待ち伏せ・連絡などを繰り返すと、「ストーキング処罰法」上のストーカー犯罪として刑事処罰の対象になります。日本人が特に見落としやすいのが、2023年7月11日の改正で「反意思不罰罪」の規定が削除された点です。かつては被害者が処罰を望まなければ起訴できませんでしたが、現在は示談しても処罰を免れるとは限りません。しかも起訴前の段階でも、裁判所の暫定措置として接近禁止や留置場・拘置所への身柄拘束を受け得ます。凶器などを用いた場合はさらに重い「特殊ストーカー犯罪」となります。外国人にとっては在留資格にも波及し得るため、供述の前に相談することが結果を左右します。

韓国に赴任・在住していて、交際が終わった相手や職場の同僚に連絡を続けた。本人としては「話し合いたかっただけ」「一度きりのつもり」だった——ところが数週間後、警察から呼び出しを受け、相手が「ストーカー被害」を申告したと告げられます。逆に、韓国で暮らす日本人が、見知らぬ相手や別れた相手から執拗な連絡・待ち伏せを受けて不安を抱えることもあります。どちらの側であっても、韓国の「ストーキング処罰法」がどこから刑事事件になるのかを知らないと、対応を誤りかねません。

本記事は、韓国弁護士の立場から、公開されている法令・判例をもとに一般的な法情報として整理したものです。登場する状況は特定の依頼者の事案ではなく、理解を助けるために再構成した一般的な設定です。特定の事件についての法的助言ではありません。

韓国の「ストーカー犯罪」とは — ストーキング処罰法の定義

韓国のストーキング犯罪の処罰等に関する法律(略称「ストーキング処罰法」)は、日本の同種の枠組みとは構成が異なります。まず第2条は「ストーキング行為」を、相手の意思に反して正当な理由なく、相手方またはその同居人・家族に対して、接近したり進路をふさぐ、住居・職場・学校などの付近で待ち伏せ・見張りをする、郵便・電話・情報通信網を通じて文言・音声・画像などを届かせる、物を置く・損壊する、といった行為をして相手に不安感または恐怖心を起こすことと定義します。2023年の改正では、個人情報を第三者に提供・掲示する行為や、他人になりすます行為など、いわゆるオンラインストーキングも加えられました。

そのうえで、こうしたストーキング行為を持続的または反復的に行うことが「ストーカー犯罪」(第2条第2号)にあたり、刑事処罰の対象になります。つまり、一回きりの行為かどうか、繰り返しの中に含まれるかどうかが分かれ目になり得ますが、その評価は具体的なやり取りの経緯によって変わります。「一度だけのつもり」「相手も嫌がっていないと思った」という認識が、そのまま法的評価になるわけではありません。

2024年施行の厳罰化 — 「示談すれば終わり」は過去のもの

外国人が最も見落としやすいのが、この改正です。かつてのストーキング処罰法は、一般のストーカー犯罪について反意思不罰罪(被害者が明示的に処罰を望まない意思を示せば公訴を提起できない)を定めていました。しかし2023年7月11日に改正されたストーキング処罰法(法律第19518号)により、この規定(旧第18条第3項)は削除されました。これにより、被害者が処罰を望まなくても、あるいは示談が成立しても、それだけで処罰を免れるとは限らなくなりました。あわせて、位置追跡電子装置の装着などの暫定措置も強化されています(一部の規定は2024年1月12日施行)。

項目 改正前 現行(改正後)
被害者が処罰を望まない場合 一般のストーカー犯罪は公訴を提起できなかった(反意思不罰罪) 反意思不罰罪の規定を削除 — 被害者の意思にかかわらず処罰され得る
示談の意味 示談で不処罰につながり得た 示談だけで処罰を免れるとは限らない(量刑の一事情にはなり得る)
暫定措置 接近禁止・留置など 位置追跡電子装置の装着など強化

この変化は、外国人にとって特に重要です。「相手に謝って示談すれば在留にも響かず終わる」という前提が、もはや当然には成り立たないからです。示談は依然として量刑上意味を持ち得ますが、それが手続の終わりを保証するものではなくなりました。

罰則と「特殊ストーカー犯罪」

ストーキング処罰法第18条第1項は、ストーカー犯罪を犯した者を3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金に処すると定めます。さらに、凶器その他の危険な物を携帯・利用してストーカー犯罪を犯した場合は「特殊ストーカー犯罪」として第2項により加重され、5年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金となります。有罪の場合には、受講命令やストーカー治療プログラムの履修命令が併科され得ます(第19条)。

凶器を用いた類型がどう扱われるかについて、大法院の判断があります。公開された判例を一般的な情報として整理すると、大法院2025年1月9日宣告2023도11912判決は、持続的・反復的に行われた一連のストーキング行為の中に凶器その他の危険な物を携帯・利用した行為が含まれている場合、その一連の行為は一つの特殊ストーカー犯罪を構成すると判断しました。そして、特殊ストーカー犯罪は(改正前の旧法でも)反意思不罰罪ではなかったため、被害者が処罰を望まなくても処罰を免れないと示しました。一連の行為の一部に凶器を用いていない行為が含まれていても同じだとしています。どの類型にあたるか、どこまでが「一連の行為」なのかは、まさに事実関係の評価の問題であり、結論が初めから決まっているわけではありません。

起訴の前でも受け得る「暫定措置」

ストーカー事件で外国人が驚きやすいのは、有罪判決を待たずに不利益を受け得る点です。ストーキング処罰法は、捜査・審理の円滑な進行と被害者保護のために、警察段階の緊急応急措置(第4条)と、裁判所が決定する暫定措置(第9条)を用意しています。

区分 主な内容
緊急応急措置(第4条) 相手方や住居等への接近禁止、電気通信を利用した接近の禁止など(警察段階)
暫定措置(第9条) 書面による警告、100m以内の接近禁止、電気通信を利用した接近禁止、位置追跡電子装置の装着、留置場・拘置所への留置(身柄拘束)

つまり、まだ有罪と決まっていない段階でも、接近禁止や身柄拘束といった実際の制約を受け得ます。身柄が拘束されれば、勤務や在留の手続にも直ちに影響します。身柄拘束の全体像については 韓国で逮捕・拘束されたら の記事も参考になります。こうした初期段階での判断は取り返しがつきにくく、供述内容や対応の順序が後の手続に影響し得るため、早い段階で韓国弁護士に相談する意味があります。

外国人に特有のリスク — 言語と在留資格

ストーカー事件は、当事者の間の連絡・言動の積み重ねが問題になるため、やり取りの経緯や意図をどう説明するかが事件の見え方を大きく左右します。韓国語での取調べで、ニュアンスを取り違えたまま供述が固まってしまうと、後から修正するのは容易ではありません。「悪意はなかった」「相手も応じていた」という認識が、正確に記録されないまま進むこともあります。

また、刑事事件の結果は、外国人の場合在留資格の判断に影響し得ます。もっとも、どの処分が在留にどう波及するかは、罪名・処分の軽重・在留資格の種類など個別の事情によって変わり、自動的に決まるものではありません。「必ず在留できなくなる」あるいは「罰金なら在留に一切影響しない」といった一律の結論を前提にせず、自分の状況に即して確認することが大切です。逆に被害を受けている側であれば、どの手続を選ぶかによって負担や時間が変わるため、早い段階の見立てが役立ちます。

核心のまとめ

  • 相手の意思に反し正当な理由なく接近・待ち伏せ・連絡などを持続的・反復的に行うと、ストーカー犯罪として処罰され得る(ストーキング処罰法§2・§18)。
  • 2023年7月11日の改正で反意思不罰罪(旧§18③)が削除。示談しても処罰を免れるとは限らない。
  • 罰則は3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金。凶器などを用いた特殊ストーカー犯罪は5年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金(§18①②)。
  • 有罪を待たずに、接近禁止・電子装置の装着・留置(身柄拘束)などの暫定措置を受け得る(§9)。
  • 刑事の結果は在留資格に影響し得るが、一律には決まらない — 個別の確認が必要。

韓国でストーカー犯罪の疑いをかけられている、あるいは執拗な連絡・待ち伏せの被害に悩んでいる——どちらの立場でも、初期の対応が事件のゆくえを左右し得ます。供述する前、あるいは手続を選ぶ前に LINE(日本語対応) からご相談ください。韓国の刑事事件の全体像は 韓国の刑事事件の弁護 のページもご覧いただけます。

よくある質問

一度連絡しただけでも韓国でストーカー犯罪になりますか?

ストーカー犯罪は、ストーキング行為を「持続的または反復的に」行うことが要件です(ストーキング処罰法§2第2号)。もっとも、一連の繰り返しの一部にあたるかどうかは具体的なやり取りの経緯で評価され、「一度きりのつもり」という認識がそのまま法的評価になるわけではありません。個別の状況の確認が必要です。

被害者と示談すれば処罰されませんか?

2023年7月11日の改正で反意思不罰罪の規定(旧§18③)が削除されたため、被害者が処罰を望まなくても、示談が成立しても、それだけで処罰を免れるとは限りません。示談は量刑上の一事情にはなり得ますが、手続の終わりを保証するものではありません。

ストーカー犯罪の刑罰はどのくらいですか?

一般のストーカー犯罪は3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金です(§18①)。凶器その他の危険な物を携帯・利用した特殊ストーカー犯罪は5年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金に加重されます(§18②)。有罪の場合、受講命令や履修命令が併科され得ます。

まだ起訴されていないのに接近禁止や留置を受けることはありますか?

あり得ます。ストーキング処罰法は、警察段階の緊急応急措置(§4)や、裁判所が決定する暫定措置(§9)として、接近禁止、電気通信を利用した接近禁止、位置追跡電子装置の装着、留置場・拘置所への留置などを定めています。有罪判決の前でも実際の制約を受け得ます。

ストーカー犯罪で有罪になると在留資格に影響しますか?

影響し得ますが、一律には決まりません。罪名・処分の軽重・在留資格の種類など個別の事情によって扱いは変わります。「必ず在留できなくなる」「罰金なら影響しない」といった前提を置かず、自分の状況に即して確認することをおすすめします。


金平浩弁護士(キム・ピョンホ)、ヨヘ法律事務所。

韓国弁護士。司法試験合格、司法研修院第43期修了。2021年 大韓弁護士協会 優秀弁護士賞受賞。2014年以来、民事・刑事・家事など全分野で累計500件以上を担当し、韓国在住の外国人の刑事事件を継続的に扱っています。ヨヘ法律事務所(ソウル特別市瑞草区法院路16、406号/瑞草洞・チョンゴクビル)。

本記事は韓国法に関する一般的な法情報であり、個別事件についての法的助言ではありません。登場する状況は理解を助けるために再構成した一般的な設定です。結果は事案ごとの事実関係によって変わり、ここに要約した規則は変更されることがあります。ご自身の状況については個別にご相談ください。

キム・ピョンホ(김평호)弁護士
キム・ピョンホ(김평호)弁護士
大韓弁護士協会 · 司法研修院43期 · 2021年優秀弁護士賞 · 2014年以来、全分野累計500件以上