当事務所の実務でも、「韓国人配偶者と離婚したいが、手続きがわからない」「韓国での離婚はどこに頼めばいいのか」というご相談が年々増えています。韓国 離婚 難しいと感じるのには、はっきりした理由があります。日本とは異なる法制度、言語の壁、双方の国にまたがる手続き——これらが重なり合い、日本人配偶者にとって一人では乗り越えにくい「壁」が生じます。本記事では、当事務所が実務で繰り返し目にする5つの壁を具体的に解説します。

韓国での国際離婚の全体像については、日韓国際離婚 — 弁護士による解説もあわせてご参照ください。

壁①:どちらの国の法律が適用されるか(準拠法の壁)

日韓夫婦の離婚では、「韓国民法が適用されるのか、日本民法が適用されるのか」という準拠法の問題が最初の難関です。韓国の国際私法(第66条、第64条準用)は、①夫婦の同一本国法を第一順位とし、それがない場合は②夫婦の同一常居所地国法、それもない場合は③夫婦に最も密接な関係がある国の法律を準拠法として適用すると定めています。

たとえば、日本人妻・韓国人夫の夫婦が韓国に居住している場合、韓国民法が準拠法となることが多く、財産分与・親権・養育費はすべて韓国の基準で判断されます。一方、すでに日本に帰国している場合は日本法が適用される可能性もあり、どちらが自分に有利かを見極めた上で手続きを選ぶことが重要です。この判断は個別の事情によって大きく変わるため、専門家への確認が不可欠です。準拠法の決まり方については日韓夫婦の国際離婚 — 準拠法と管轄の選び方もあわせてご参照ください。

壁②:どこの裁判所に訴えるか(管轄の壁)

準拠法と並んで重要なのが「裁判管轄」です。韓国の裁判所で離婚を申し立てるか、日本の裁判所に提訴するか——この選択が手続き全体の流れと費用を左右します。

韓国家事訴訟法上、配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に離婚の訴えを提起できます。韓国在住の韓国人配偶者を相手にする場合、韓国の裁判所が管轄を持つのが一般的です。一方、日本の裁判所で判決を得たとしても、相手が韓国に資産を持つ場合には韓国側での執行手続きが別途必要になります。どちらで手続きを進めるべきかは、相手の財産状況・居住地・双方の証拠収集能力を総合的に考慮して決める必要があります。

壁③:協議離婚の熟慮期間と来韓の負担

韓国には「協議離婚意思確認制度」があり、夫婦双方が韓国の家庭裁判所に出頭して離婚意思を確認しなければなりません。さらに、未成年の子がいる場合は3ヶ月間の熟慮期間、子がいない場合でも1ヶ月間の待機期間が設けられています。

日本在住の配偶者にとっては、家庭裁判所での意思確認や熟慮期間のため、韓国への出頭または在外手続の可否を事前に確認する必要があります。実際の出頭回数は、居住地・子の有無・裁判所の運用によって変わります。仕事・子育て・費用の問題が重なり、協議離婚だけでも相当な負担になることがあります。また、相手方が出頭を拒否したり、熟慮期間中に翻意する場合もあります。「協議がまとまった」と思っていても、実際には複数の法的ステップが残っている——というケースが実務では少なくありません。

日韓 離婚制度 比較表

項目 日本 韓国
離婚方法 協議離婚・調停・裁判 協議離婚(裁判所出頭要)・調停・裁判
冷却期間 なし(届出のみ) 子あり:3ヶ月 / 子なし:1ヶ月
財産分与基準 婚姻期間中の共同財産を2分の1原則で分割 寄与度を個別に審査(事案により結果は大きく異なる)
親権 2024年改正で共同親権も可(原則単独) 共同親権・単独親権どちらも可能
戸籍手続き 市区町村に届出(自国内で完結) 韓国家族関係証明書の整理 + 日本戸籍への反映(二国間手続き)
訴訟言語 日本語 韓国語(翻訳・通訳費用が発生)

壁④:財産分与の基準と隠匿リスク(韓国 離婚 難しい 理由の核心)

韓国の財産分与は「寄与度」を個別に判断します。専業主婦(夫)であっても家事・育児への貢献を寄与度として認め、分与割合は婚姻期間・財産形成への直接的な貢献・家事や育児の負担など複数の要素を総合考慮して算定されます。日本の2分の1原則とは異なり、個別の状況を具体的に主張・立証することが重要です。

韓国大法院 2025年10月16日判決(事件番号 2024ム13669)は、財産分与において一方配偶者の寄与をどのように認めるか、また分割対象財産の算定基準時をいつと見るかが争点となった事案です。同判決は、寄与度の認定と分割対象財産の評価基準時点について重要な判断を示しています。日本民法上の財産分与と異なり、韓国民法では評価基準時点・対象資産の範囲が事案ごとに判断されるため、専門家による事前の財産目録作成と証拠保全が必要です。

また、相手方が離婚を察知して韓国内の不動産を売却したり、法人名義に移転したりするケースも実務では見られます。韓国大法院 2025年9月4日判決(事件番号 2025ム10730)は、一方の配偶者が夫婦の共同財産を一方的に処分した行為が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかどうかが争点となった事件であり、財産隠匿が離婚事由の判断にも影響し得ることを示しています。財産保全の手続き(仮差押え等)を早期に検討することが、日本人配偶者にとって重要です。財産分与の基準についての詳細は韓国 離婚 財産分与の基準 — 日本法との違いもご参照ください。

壁⑤:戸籍・在留資格への影響

離婚が成立した後も、日本人配偶者には二国間の手続きが残ります。韓国側で離婚成立を家族関係登録簿に反映・整理させ、その証明書類を日本の市区町村に届け出て日本戸籍にも反映させる必要があります。韓国側の書類は日本語に翻訳・認証する手続きが必要で、慣れていないと書類の不備で手続きが止まることがあります。

さらに、韓国に在住している日本人配偶者の場合、韓国人配偶者の身分に基づく在留資格(F-6ビザ等)の継続可否や更新条件は個別の事情によって異なります。離婚後も一定の要件のもとで在留を継続できる場合もあるため、離婚を決意した段階から在留資格の見通しを弁護士と事前に確認しておくことが、予期しないトラブルを防ぎます。

5つの壁が組み合わさると、判断は複数層になる

準拠法の選択・管轄・熟慮期間・財産分与の基準・戸籍手続き——これらは独立した問題ではなく、互いに影響し合います。たとえば「準拠法が韓国法か日本法か」によって、財産分与の評価方法も親権判断の基準も変わります。管轄を韓国にするか日本にするかで、証拠収集のタイミングと財産保全の手段が異なります。

「どこから手をつければよいかわからない」という状態が、韓国離婚を難しく感じさせる本当の理由です。自分の状況がこれらの壁のどこに該当するかを整理し、どの手順で進めるべきかを確認することが、最初の一歩になります。

なぜ相談が必要か

準拠法・管轄・財産分与・戸籍——この4つの判断が個別の事情によって組み合わさります。本人の状況がどの壁に当たり、どこから動くべきかは、一度LINEで状況をお聞かせいただくことで整理できます。


LINE で無料相談する


金平浩 弁護士(キム・ピョンホ)

韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。韓国弁護士協会 家族法専門弁護士登録。2021年 優秀弁護士賞受賞。2015年以来、500件以上の事件を担当。