「韓国人の夫(妻)と離婚することになったら、F-6ビザはどうなるのか」——離婚を考え始めたとき、多くの日本人配偶者が最初に直面するのが、この在留資格への不安です。韓国で何年も生活し、子どもが韓国の学校に通い、仕事もようやく落ち着いた。それでも「離婚したら韓国にいられなくなるのではないか」という不安から、本来主張できるはずの権利をためらってしまう方は少なくありません。
結論から言えば、韓国で離婚した後のF-6ビザの扱いは「いられる/いられない」と単純に分かれるものではなく、離婚の方法・子の有無・婚姻破綻の責任が誰にあるかによって見通しが大きく変わります。この記事では、韓国で離婚した場合にF-6ビザ(結婚移民ビザ)がどうなるのかを、日本人配偶者の視点から韓国弁護士が整理します。国際離婚全体の流れについては国際離婚・日韓夫婦の離婚ガイドもあわせてご覧ください。
韓国 離婚後のF-6ビザ — まず知っておくべき基本
F-6ビザ(結婚移民ビザ)は、韓国国民との婚姻関係を基礎として与えられる在留資格です。したがって、離婚によって婚姻関係が解消されると、この在留資格の法的な土台も変わります。ただし、それは「離婚した瞬間に韓国を出なければならない」という意味ではありません。
まず押さえておくべき重要な点があります。離婚をしても、現在持っている外国人登録証(在留カード)に記載された在留期間が満了するまでは、引き続き適法に韓国に滞在できます。問題になるのは、その満了後に在留期間を延長(更新)できるか、あるいは別の在留資格に変更できるかという点です。ここを「離婚=即座に在留資格の喪失」と誤解している方が多く、逆に「元配偶者が更新に協力してくれるはずだ」と楽観して動くべき時期を逃してしまう方もいます。
F-6ビザの3つの区分 — 離婚後はどれに当てはまるか
F-6(結婚移民)の在留資格は、実務上おおむね次の3つに区分されています。韓国で離婚した後にどの区分に当てはまるかが、在留の見通しを左右します。
| 区分 | 対象 | 離婚との関係 |
|---|---|---|
| F-6-1(国民の配偶者) | 韓国国民と正常な婚姻関係にあり、韓国に滞在する配偶者 | 婚姻関係が前提。離婚するとこの区分の基礎が失われる |
| F-6-2(子の養育) | 韓国国民との婚姻関係から生まれた未成年の子を養育する父または母 | 離婚しても、韓国国籍の未成年の子を養育していれば該当しうる |
| F-6-3(婚姻の中断) | 韓国人配偶者の死亡・失踪、その他「本人の責任によらない事由」で正常な婚姻関係を維持できない人 | 離婚の主な責任が韓国人配偶者にある場合などに該当しうる |
離婚後にどの区分に当てはまるかは、おおむね「子の有無」と「婚姻破綻の責任が誰にあるか」という二つの軸で決まります。
離婚の3つのパターンと在留資格の見通し
韓国で離婚した後にF-6ビザがどうなるかは、離婚の進め方と家族の状況によって、おおむね次の3つのパターンに分けて考えることができます。
| 状況 | 在留期間の更新・変更 | 長期的な見通し |
|---|---|---|
| 協議離婚・夫婦間に子がいない | 更新は認められないのが原則 | 在留カードの満了まで滞在し、その後は出国または別の在留資格への変更を検討 |
| 裁判離婚で婚姻破綻の主な責任が韓国人配偶者にある・子がいない | F-6-3への変更・更新が認められる場合がある | 要件を維持していれば更新を重ねられ、将来的に永住資格(F-5)への変更を検討できる場合もある |
| 韓国国籍の未成年の子を養育している(または面会交流を行っている) | F-6-2への変更・更新が認められる場合がある | 子が韓国法上の成年(満19歳)に達するまでは適法な滞在の基礎となりうる |
パターン1:協議離婚・子がいない場合
最も在留資格の維持が難しいのが、子がいない夫婦が協議離婚をするケースです。双方が合意して離婚する協議離婚では、婚姻破綻の責任を誰が負うのかという判断が記録に残りません。そのため、F-6-3の「本人の責任によらない事由」を当局に示すことが難しく、原則として在留期間の更新は認められません。元配偶者が「離婚後も更新に協力する」と口約束をしても、あるいは念書を書いても、それ自体に在留資格を維持させる法的な効力はありません。出入国管理当局は、個人の約束ではなく法令上の要件にもとづいて審査するためです。
パターン2:裁判離婚で配偶者に主な責任がある場合
一方、自ら裁判離婚を提起し、婚姻破綻の主な責任が韓国人配偶者の側にあると認められた場合は、子がいなくてもF-6-3として在留を続けられる可能性があります。ここで重要な判例があります。韓国大法院 2018두66869判決(2019年7月4日)は、F-6-3(婚姻の中断)の在留資格の要件である「本人の責任によらない事由で正常な婚姻関係を維持できない人」とは、「本人に主な責任がない事由」、すなわち「婚姻破綻の主な責任が韓国人配偶者にある場合」を意味すると判示しました。つまり、外国人配偶者の側に一切の落ち度がない場合に限られるわけではなく、責任の主たる部分がどちらにあるかが基準になります。
同判決は、この区分が人道的な配慮にもとづくものであること、そして在留資格を拒否する処分の理由(=破綻の主な責任が韓国人配偶者にあるとはいえないという判断)については行政庁の側に証明責任があることも明らかにしています。さらに同判決は、婚姻破綻の責任については家庭法院が離婚確定判決で示した判断を、出入国管理当局や裁判所は特別な事情がない限り尊重すべきだとしています。裁判離婚の判決の内容が、その後の在留資格の判断に直接つながるということです。なお、F-6-3の在留資格は1回あたり最長3年の在留期間が付与され、期間が満了するたびに要件を満たしているかどうかの実質的な審査を受けるものであり、永住資格や帰化とは性質が異なります。
パターン3:韓国国籍の子を養育している場合
韓国国籍の未成年の子がいる場合は、離婚後もその子を養育する父または母として、F-6-2の在留資格が認められる可能性があります。これは実際に子を引き取って育てている親だけでなく、定期的に面会交流を行っている親にも及びうると運用されています。ただし「制度上は該当しうる」ことと「実際に更新が認められる」ことは必ずしも一致しません。たとえば元配偶者が面会交流を妨げ、子と実際に交流している事実を示せないと、更新の審査で困難が生じることがあります。この場合、まず面会交流の権利を法的に確保することが、在留資格を守ることにもつながります。
「離婚の方法」が在留資格を左右する — 協議離婚を急ぐ前に
注意すべきは、法令上の要件を満たしていても、それだけで在留が確実に保障されるわけではないという点です。韓国大法院 2015두48846判決(2016年7月14日)は、出入国管理法上の在留資格の変更許可は申請者に新たな権限を与える「設権的処分」であり、許可権者は要件を満たした申請者についても、適格性・滞在目的・公益への影響などを考慮して許可の可否を決める裁量を持つと判示しました。ただしその裁量にも限界があり、事実認定に重大な誤りがある場合や、比例・平等の原則に反する場合などは、裁量権の逸脱・濫用として違法になるとしています。配偶者から暴力を受けているのに「早く関係を終わらせたい」という思いから協議離婚を選ぶと、婚姻破綻の責任が記録に残らず、F-6-3への道を自ら狭めてしまうことがあります。離婚の「結論」だけでなく「方法」が在留資格に直結する——だからこそ、自分の事情のどの要素をどう示すかを、手続きを始める前に整理しておくことが大切です。
韓国で離婚した後にすべき手続き
離婚が成立した後には、早めに済ませておくべき手続きがあります。協議離婚の場合、家庭法院の確認を受けた日から3か月以内に離婚届を提出しなければならず、この期限を過ぎると確認の効力が失われ、法的にはまだ夫婦のままという状態になります。離婚にともなって転居した場合は、出入国・外国人官署への滞在地変更の届出も、定められた期限内に行う必要があります。そして在留資格については、早めに出入国管理当局に相談し、自分がどの区分に該当しうるかを確認しておくことが重要です。
なお、配偶者と別居していたり、長く連絡を取っていなかったりする場合は、自分の婚姻状態を定期的に確認しておくことをおすすめします。相手が一方的に裁判離婚を進め、書類が適切に届かないまま判決が確定すると、本人が気づかないうちに在留カードの期限切れと重なり、不法滞在の状態になってしまうことがあります。不法滞在になると、適法な状態に戻す手続きは、早期に対応する場合よりもはるかに複雑になります。
日本人配偶者が特に注意すべき点
言語の壁。出入国管理当局に提出する書類も裁判離婚の手続きも、すべて韓国語で行われます。婚姻破綻の責任に関する主張は在留資格の判断に直結しますが、その主張や証拠を韓国語で適切に組み立てられないと、本来有利に働くはずの事情が評価されないまま手続きが進んでしまうことがあります。前掲の大法院 2018두66869判決も、外国人配偶者は韓国の制度や言語に不慣れなため、自分に有利な事情を裏づける証拠を十分に確保できないまま別居や離婚に至る場合があると指摘しています。
日本側の手続き。韓国で離婚が成立しても、それだけで日本の戸籍に反映されるわけではなく、在韓日本国大使館・総領事館などへの届出が別途必要です(詳細は大使館や日本の専門家にご確認ください)。また、日本の「日本人の配偶者等」の在留資格と韓国のF-6ビザは別の制度であり、「日本ではこうだから韓国でも同じはず」と考えると、見通しを誤ることがあります。
離婚の条件と在留資格はセットで考える。財産分与・慰謝料・親権といった離婚そのものの条件と、離婚後の在留資格は、本来一体として検討すべきものです。たとえば慰謝料請求の裁判で配偶者の責任が認められれば、それはF-6-3の判断にも影響しうる事情になります(韓国の離婚 慰謝料の記事)。子がいる場合の親権・養育の取り決めも、F-6-2と密接に関わります(韓国の親権・養育者指定の記事)。
よくある質問
離婚したら、すぐに韓国を出なければなりませんか?
いいえ。離婚をしても、現在の外国人登録証(在留カード)に記載された在留期間が満了するまでは、引き続き適法に韓国に滞在できます。問題になるのは、その満了後に在留期間を更新できるか、別の在留資格に変更できるかという点で、これは離婚の方法や子の有無によって異なります。
元配偶者が「離婚後もビザの更新に協力する」と約束しました。この約束に効力はありますか?
在留資格を維持させる法的な効力はありません。元配偶者が念書を書いたとしても、出入国管理当局は法令上の要件にもとづいて審査します。離婚後、元配偶者は在留資格について保証する立場にはありません。約束をあてにせず、自分の状況を法的にどう示すかを検討する必要があります。
子どもがいなくても、離婚後に韓国に在留を続けられますか?
子がいない場合でも、裁判離婚で婚姻破綻の主な責任が韓国人配偶者にあると認められれば、F-6-3の在留資格として在留を続けられる可能性があります。韓国大法院 2018두66869判決も、外国人配偶者に一切の落ち度がない場合に限らず、責任の主たる部分が韓国人配偶者にあるかどうかを基準としています。ただし最終的な判断は当局の審査によります。
配偶者から暴力を受けています。離婚するとビザを失うのが怖くて踏み切れません。
まさにそうした場合こそ、離婚の手続きを始める前に弁護士に相談することが大切です。暴力の証拠を整えたうえで裁判離婚を進め、配偶者の責任が認められれば、離婚後も在留を続けられる可能性があります。重要なのは証拠の集め方と手続きの選び方であり、「早く終わらせたい」という思いから協議離婚を選ぶと、かえって在留資格の道を狭めてしまうことがあります。
すでに離婚しましたが、在留資格を更新できるか分かりません。どうすればよいですか?
離婚の方法、子の有無、現在の在留カードの期限によって、とりうる選択肢は変わります。一見すると更新が難しそうに見えるケースでも、事情の示し方によって道が残っていることがあります。自己判断で結論を出さず、早めに専門家に確認することをおすすめします。
ご相談について
韓国で離婚した後にF-6ビザがどうなるかは、離婚の方法・子の有無・婚姻破綻の責任という複数の要素の組み合わせで決まり、しかも在留資格の判断には当局の裁量が伴います。「自分のケースはどの区分に当てはまるのか」「協議離婚と裁判離婚のどちらを選ぶべきか」——この判断は、後から取り返すことが難しいため、離婚の手続きを始める前に整理しておく必要があります。ご自身の状況での見通しを確認したいときは、LINEで基本的な状況をお知らせいただければ確認いたします。
※ 本記事は韓国法に関する一般的な情報をまとめたものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。在留資格に関する判断は出入国管理当局の審査によるものであり、具体的な見通しは事案によって異なります。