この記事の要点

日本で離婚が成立しても、韓国の家族関係登録簿が自動的に書き換わることはありません。二つの国の身分登録は連動しておらず、韓国側では今も婚姻中のまま、ということが起こります。しかも韓国に反映させる道筋は一本ではなく、日本での離婚が裁判(調停・審判・判決)だったのか、それとも協議離婚(離婚届)だったのかで、根拠となる法律から変わります。とりわけ協議離婚の場合、韓国国際私法第66条ただし書により韓国法が適用される場面があり、韓国法の協議離婚は家庭法院の確認を要件としています(韓国民法第836条第1項)。日本の役所に離婚届を出しただけ、という事実が、韓国側でそのまま通るとはかぎらないのです。放置している間に、再婚・相続・財産分与の期限が静かに動きます。

横浜にお住まいのKさん(設例であり、実在の事件ではありません)が韓国人の夫と離婚したのは、五年前のことでした。話し合いは穏やかにまとまり、二人で市役所へ行って離婚届を出しました。日本の戸籍はその日のうちに整いました。Kさんはそれで手続きは終わったものと考え、それきり韓国のことは頭から離れていました。五年後、再婚を決めて婚姻届の準備を始めたとき、相手方に前配偶者との関係を証明する書類を求められ、はじめて韓国の家族関係証明書を取り寄せました。そこには、五年前に別れたはずの夫が、今も配偶者として記載されていました。

この記事では、日本で成立した離婚を韓国側に反映させるとき、どこで道が分かれ、どこで止まるのかを扱います。日本と韓国の双方に身分関係が残る夫婦にとって、これは「あとで済ませればよい事務手続き」ではなく、時間の経過そのものが不利益に変わる問題です。

二つの国の登録簿は、つながっていない

日本の戸籍と韓国の家族関係登録簿は、それぞれの国が自国の法律に基づいて管理する別個の制度です。日本の役所が離婚届を受理しても、その情報が韓国の市・邑・面へ通知される仕組みはありません。韓国側に反映させるには、韓国の法律が定める手続きを、韓国側で別に踏む必要があります。

そしてこの「別に踏む手続き」が、一種類ではないところに、この問題の難しさがあります。日本での離婚がどのような形で成立したかによって、韓国側で通る道が変わるのです。

第一の分かれ道 — 裁判だったのか、届出だったのか

日本の家庭裁判所を通じた離婚(調停離婚、審判離婚、判決による離婚)は、外国の裁判にあたります。韓国民事訴訟法第217条第1項は「外国法院の確定判決またはこれと同一の効力が認められる裁判」を対象としており、判決の形をとらない調停や審判もこの枠組みで検討されます。そして外国の確定裁判が韓国で効力を持つためには、同項が定める四つの要件をすべて満たさなければなりません。すなわち、その外国裁判所に国際裁判管轄権が認められること、敗訴した被告が防御に必要な時間的余裕をもって適法な方式で送達を受けたか(ただし公示送達またはこれに類する送達による場合は除かれます)、送達を受けていなくても訴訟に応じたこと、その裁判の承認が韓国の善良な風俗その他の社会秩序に反しないこと、そして相互保証があるか、両国の承認要件が著しく均衡を失わず重要な点で実質的な差異がないことです。同条第2項は、これらの要件が満たされているかを法院が職権で調査しなければならないと定めています。当事者が争っていなくても、審査は行われるということです。

公示送達が除外されている点は、実務上とりわけ重い意味を持ちます。相手方の所在が分からないまま日本で手続きを終えた事案では、この一点が後になって韓国側で承認を阻む要素になり得るからです。

この要件を満たす裁判であれば、離婚の裁判が確定した場合の届出について、韓国の家族関係の登録等に関する法律第78条が第58条を準用し、訴えを提起した人裁判の確定日から1か月以内に、裁判書の謄本および確定証明書を添えてその旨を届け出るものとされています。なお第58条第3項は、その訴えの相手方の側からも裁判書の謄本および確定証明書を添えて届け出ることができると定めています。相手方が動かない事案で、条文上の経路が一本だけではないという点は覚えておく価値があります。

これに対し、日本の協議離婚(離婚届)は裁判ではありません。したがって第217条の承認という枠組みにはそもそも乗りません。ここで問題になるのは承認ではなく、その離婚にどの国の法律が適用されるかという準拠法です。そして、ここに多くの方が想定していない条文が待っています。

国際私法第66条ただし書 — 韓国法が戻ってくる場面

韓国国際私法第66条は「離婚については第64条を準用する。ただし、夫婦の一方が大韓民国に日常居所がある大韓民国国民である場合、離婚は大韓民国法による」と定めています。準用される第64条は、婚姻の一般的効力について、①夫婦の同一本国法、②夫婦の同一日常居所地法、③夫婦と最も密接な関連がある地の法という順序を置いています。

日本人と韓国人の夫婦には、①の同一本国法がありません。そこで②に進み、二人とも日本に生活の本拠を置いていたのであれば日本法が準拠法となり、日本の方式による協議離婚が準拠法上も筋の通ったものとして評価される余地が出てきます。

ところが、ただし書があります。韓国人配偶者が韓国に日常居所を持っていた場合、離婚には韓国法が適用されます。そして韓国法における協議離婚は、民法第834条が「夫婦は協議によって離婚することができる」と定めつつ、第836条第1項が「協議上の離婚は、家庭法院の確認を受け、家族関係の登録等に関する法律の定めるところにより届け出ることによって、その効力が生ずる」としています。家庭法院の確認という段階が、効力発生の要件として置かれているのです。日本の役所の窓口に離婚届を出しただけ、という経過は、この要件を通っていません。

ご自身のケースがどちらに当たるのかは、「日常居所がどこにあったと評価されるか」という事実認定に左右されます。住民登録の有無だけで決まるものではなく、実際の生活の本拠がどこにあったのかが問われます。単身赴任、二重生活、行き来のある期間——日韓の夫婦にはこの評価が割れやすい事情が多く、ご自身で断定するのが最も危険な部分でもあります。

日本での離婚の形 韓国側で問題になる枠組み 主な根拠条文
調停離婚・審判離婚・判決離婚 外国裁判の承認(四要件・法院の職権調査)。公示送達による場合は第2号から除外 民事訴訟法第217条第1項・第2項
同上(承認された場合の届出) 訴えを提起した人が裁判確定日から1か月以内に届出。相手方の側からも届出可(第58条第3項) 家族関係登録法第78条→第58条第1項・第3項
協議離婚(離婚届) 承認ではなく準拠法の問題。ただし書に当たれば韓国法が適用され、家庭法院の確認が要件となる 国際私法第66条・第64条/民法第834条・第836条第1項
(在外国民が外国の方式で届出事件に関する証書を作成した場合) 3か月以内に証書の謄本を提出・発送する仕組みが置かれている 家族関係登録法第35条第1項・第2項

表の最後の行について、一点だけ補足します。家族関係登録法第35条は在外国民——つまり韓国国民が外国の方式で身分に関する証書を作成した場合の規定です。日本人配偶者の側がこの条文の名宛人になるわけではありません。日韓夫婦のどちらが、どの立場で、何を提出できるのかは、この一点だけでも整理が要ります。

窓口を通ったから安心、とはならない

以下は、大法院1994年5月10日宣告93므1051判決の事案を、要点が伝わる範囲で再構成したものです(当事務所の事件ではなく、公開された判例に基づく説明です)。当時の民事訴訟法第203条第3号——現行の第217条第1項第3号に相当する規定——に基づく判断です。舞台は米国ですが、働いている法理は相手国を選びません。

夫は韓国の家庭法院に離婚を求め、敗訴しました。主に責任があるのは夫の側だという理由で、控訴審でも同じ結論となり、その判決は確定しました。判決の確定をはさむ時期に夫は米国へ渡り、ネバダ州の裁判所に、今度はその州の法律に合わせた理由を並べて離婚訴訟を提起します。妻には書類が届いたものの応答がなく、欠席のまま離婚判決が出て確定しました。夫はこの判決を持って韓国の区役所に離婚届を出し、受理されました。そのわずか十日後に別の相手と婚姻届を出し、子どもも生まれました。書類の上では、すべて整っていたのです。

大法院は、同一当事者の同一事件について韓国で判決が確定した後に外国で判決が出て確定したのであれば、その外国判決は韓国判決の既判力に抵触し、韓国の善良な風俗その他の社会秩序に反するとして、外国判決の承認要件を欠き、韓国では効力がないと判断しました。区役所が受理したという事実は、この判断を左右しませんでした。窓口の受理は、承認要件が満たされていたことの証明ではないのです。

この事案で覆ったのは離婚そのものですが、影響はそこにとどまりません。離婚が効力を持たないのであれば、その離婚を前提に積み上げられた再婚は、重婚の問題に置かれる状態になります(本判決自体が再婚の効力まで判断したものではありません)。日本での離婚を韓国に反映させる場面でも、構造は同じです。反映されたように見える状態と、法的に有効な状態は、別のことがあり得ます。

放置している間に動くもの

韓国側で婚姻が続いていることになっている状態を放置すると、いくつかの期限や制度が、気づかないうちに作動します。

場面 起こり得ること 根拠
再婚 韓国側で配偶者がいる状態のままとなり、重婚の問題が生じ得る 民法第810条(重婚の禁止)
財産分与 請求権は離婚した日から2年で消滅する。「離婚した日」がいつかという評価自体が争いになり得る 民法第839条の2第3項(裁判上の離婚には第843条により準用)
相続 韓国の登録簿上は配偶者として記載が残るため、相続をめぐる主張の前提が食い違う 家族関係登録簿の記載
在留・身分の証明 両国の公的書類の記載が食い違い、婚姻関係を前提とする手続きで説明を求められる 個別の判断による

在留資格については、断定を避けます。書類上の婚姻関係の不整合が在留にどう影響するかは、資格の種類や個別の事情によって判断されるもので、一律の結論を置けるものではありません。ただ、両国の公的書類が食い違っているという状態そのものが、説明を要する状況を作ることは確かです。

公平のために — この手続きの限界

早く動くべき問題である一方、過度な期待も置けません。日本での離婚が裁判によるものであれば、第217条の要件をめぐって、送達がどう行われたか、相手方が実際に応訴したかといった、何年も前の記録が問われます。時間が経つほど資料は集めにくくなります。協議離婚の場合には、当時の日常居所の評価という、当事者双方の記憶と資料に依存する判断が中心になります。

また、相手方の協力が得られない事案では、進め方そのものを組み替える必要が出てきます。相手方の所在が分からない、連絡が途絶えているという状況は、日韓の夫婦では珍しくありません。この場合に何ができるかは、事案ごとに大きく異なります。

それでも早い段階で確認する意味があるのは、この問題は必ず、いちばん困る場面で表面化するからです。再婚を決めたとき、相続が開始したとき、不動産を処分しようとしたとき——いずれも、待ってもらえない場面ばかりです。

要点の整理

・日本の戸籍と韓国の家族関係登録簿は連動しない。日本で離婚届が受理されても、韓国側は自動では変わらない。

・日本での離婚が裁判なら、韓国民事訴訟法第217条第1項の四要件を満たす必要があり、法院が職権で調査する(同条第2項)。公示送達による場合は第2号から除外される。承認される場合の届出は裁判確定日から1か月以内で、相手方の側からも届出ができる(家族関係登録法第78条→第58条第1項・第3項)。

・日本での離婚が協議離婚(離婚届)なら、問題は承認ではなく準拠法。国際私法第66条ただし書に当たる場合は韓国法が適用され、韓国法の協議離婚は家庭法院の確認を効力要件とする(民法第836条第1項)。

・窓口で受理されたことは、法的に有効であることの証明にならない(大法院1994.5.10.宣告93므1051判決の構造)。

・放置している間に、重婚(民法第810条)や財産分与の2年の期間(第839条の2第3項)が動く。

よくある質問

Q. 日本で離婚届を出せば、韓国でも自動的に離婚したことになりますか?

なりません。日本の戸籍と韓国の家族関係登録簿は別個の制度で、一方の受理が他方に通知される仕組みはありません。韓国側に反映させるには韓国の法律に基づく手続きが別に必要で、その道筋も、日本での離婚が裁判だったのか協議離婚だったのかによって変わります。

Q. 日本の家庭裁判所の調停で離婚しました。韓国でもそのまま通りますか?

外国の裁判が韓国で効力を持つには、韓国民事訴訟法第217条第1項の四要件をすべて満たす必要があります。すなわち、国際裁判管轄、敗訴した被告が防御に必要な時間的余裕をもって適法に送達を受けたこと(公示送達またはこれに類する送達による場合は除かれます)または送達を受けていなくても訴訟に応じたこと、善良な風俗その他の社会秩序に反しないこと、そして相互保証があるか両国の承認要件が著しく均衡を失わず重要な点で実質的な差異がないことです。同条第2項により、法院はこの要件を職権で調査します。当事者間に争いがなくても審査は行われるため、当時の送達や手続の経過が問われることになります。

Q. 協議離婚(離婚届)の場合、なぜ韓国法が出てくるのですか?

韓国国際私法第66条は離婚について第64条を準用しつつ、ただし書で「夫婦の一方が大韓民国に日常居所がある大韓民国国民である場合、離婚は大韓民国法による」と定めているためです。このただし書に当たると、韓国民法第836条第1項により、協議上の離婚は家庭法院の確認を受けて届け出ることで効力を生ずるという要件が適用されます。日本の役所への届出だけでは、この要件を通っていません。どちらに当たるかは日常居所の評価次第で、住民登録の有無だけで決まるものではありません。

Q. 何年も前の離婚ですが、今からでも間に合いますか?

反映の手続き自体に一律の期限があるわけではありませんが、時間の経過は不利に働きます。裁判による離婚であれば当時の送達や応訴の記録が問われ、協議離婚であれば当時の生活の本拠がどこであったかという評価が問われます。いずれも古い資料に依存します。加えて、財産分与請求権は離婚した日から2年で消滅し(民法第839条の2第3項。裁判上の離婚には第843条により準用)、再婚を予定している場合は重婚の問題(第810条)が先に立ちます。

Q. 相手方と連絡が取れません。それでも進められますか?

事案によります。日本での離婚が裁判によるもので韓国側の届出が必要な場面では、家族関係登録法第58条第3項(第78条により準用)が訴えの相手方の側からの届出も認めているため、条文上の経路は一本ではありません。他方で、そもそも日本での手続きが公示送達によって進んでいた場合には、民事訴訟法第217条第1項第2号が公示送達を除外しているため、承認の段階で別の問題が生じ得ます。連絡が途絶えている、所在が分からないという事情は日韓の夫婦では珍しくないため、まず当時の手続きがどう進んだのか、現状の書類がどうなっているのかを確認したうえで検討することになります。

関連して、韓国側で協議離婚を進める場合の枠組みは韓国の協議離婚の解説、そもそもどちらの国の裁判所で離婚を進めるかという問題は国際離婚の管轄、韓国法と日本法の違いは日韓夫婦の国際離婚をご覧ください。離婚後の在留資格については離婚後のF-6ビザで扱っています。外国判決の韓国での取扱い全般は外国判決の承認・執行のご案内、日韓の国際離婚全般は日韓の国際離婚のご案内にまとめています。

この問題は、いつも「いちばん困る場面」で表に出ます。
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金平浩弁護士(キム・ピョンホ)
韓国弁護士、司法試験合格、司法研修院第43期修了。大韓弁護士協会 離婚専門弁護士登録。2021年 大韓弁護士協会 優秀弁護士賞受賞。
2014年以来、民事・刑事・家事など全分野で累計500件以上の事件を担当。

本記事は一般的な法律情報であり、個別事案についての法的助言ではありません。日常居所の評価や適用される条文は事案ごとに異なります。具体的な事案については弁護士にご相談ください。
여해법률사무소(ヨヘ法律事務所)— 韓国における外国人のための法律相談。
ソウル特別市瑞草区法院路16、406号(瑞草洞、正谷ビル)

キム・ピョンホ(김평호)弁護士
キム・ピョンホ(김평호)弁護士
大韓弁護士協会 · 司法研修院43期 · 2021年優秀弁護士賞 · 2014年以来、全分野累計500件以上